いい会社視察記録

大里綜合管理株式会社


いい会社を相当数追いかけてきており、だいぶ目が肥えてきているとは思いますが、世の中にはまだまだ底知れない優良企業があるなと感じさせる会社に出会いました。その会社は、大里綜合管理株式会社といい、千葉県は大網に所在します。社員数35人、年商約6億円の会社です。

同社は不動産業を営んでいますが、本業ではない社会貢献事業に中小企業とは思えないほど精力的に取り組んでいます。その数、なんと140ものプロジェクトにのぼります。なぜそんなにも多くの社会貢献活動に取り組んでいるのかというと、「一隅を照らす」という経営理念の存在によるところが大きいようです。

「一隅を照らす」という理念について、同社のサイトではこのように説明をしています。

なんとも爽やかな思いが伝わってきます。野老(ところ)真理子社長は、母、セヨ子さんが設立した同社を平成5年、34歳の時に引き継ぎました。「私が、大学を出て母の会社に正式に入社したのは25歳の時でした。高校のころから10年間もアルバイトをさせてもらっていたので、母の会社をいい会社だなと思うようになっておりました。」とは野老社長の弁。

不動産業はまさに景気連動型業種の典型であると思えますが、有力な企業が倒産していくところを目の当たりに見てきたという野老さんは、一時の利益に目がくらめばたちまちパンクすると戒めて、地域に根差した、なくてはならない会社になることを経営理念に込めて年輪経営を重ねてきました。母親は会社経営はあくまでも家族を養うため、5人の子どもを育てるための手段でしたが、野老社長にとっては会社は社会の公器であり、継続することが使命だと考えています。利益追求だけではなく、企業と地域社会の融合を図り、地域貢献をしながら利益を上げるのが会社であると考え、現在の経営スタイルを築き上げていきました。他の理念経営をしているケースがそうであるように、社長を引き継いだ後、そうした価値観になじめない社員が半分くらいは退職していったそうです。


それではどのような活動をしているのか紹介していくことにしましょう。最もすごいと感じたことは、子育て支援の充実ぶりです。支援というよりは、会社がともに社員の、そして地域の子どもたちを育てているというほうが正確かもしれません。

「学童保育」というプログラムがあって、親が共働きの子どもたちは、学校を終えると、「ただいま」と言って、この会社に帰ってくるのです。月曜から金曜まで、毎日午後7時までは、会社が保育園や学童クラブの役割も担い、社員の子どもたちだけではなく、地域の子どもたちを受け入れているのです。土曜日は別に土曜学校というクラスもあります。子どもたちは、社員の仕事の邪魔にならないように、上級生が小さな子どもたちの面倒を見ているそうです。

また、この会社では子連れの出勤も珍しくありません。普段は託児所に預けていても、子どもが風邪気味の時などは預かってもらえません。そういう時は子どもを職場に連れて来てもいいということになっています。職場では、手の空いている社員たちが交代で子どもの面倒をみています。朝礼の時に社員の周りで子どもがはしゃぎ回っているのだそうです。年中、子どもの声が聞こえている会社なのです。多く企業をみてきて、育児と仕事の両立ほど難しい課題はないと感じていますが、この課題を見事にクリアしているのです。これはすごいことだと感じます。

野老社長は語ります。

社員のお一人はこう語ります。

見事な恩送りの関係性が築かれています。学童保育のほかにも、コンサート、寄席、ギャラリー、地域の掃除、道路の管理(植え込みの剪定や下刈りなど)、通学路の安全誘導、交通整理、球根植え、各種の語学講座、宅建や測量士のためのセミナー、歩け歩け大会の実施、バスツアー、料理教室、地域づくりの塾開催、手話のおもてなしプロジェクトなどの社会、地域貢献活動を手がけています。ここまで徹底した活動をすれば、地域では絶大な信頼を勝ち得ているであろうことが容易に想像できます。

本当に最初からこんな経営が志せていたのか尋ねてみたところ、あるきっかけがターニングポイントになったと打ち明けてくれました。それは、社外活動をしていたときに、たまたま通りかかったバイクが接触事故を起こし、運転手が即死するという死亡事故が起きたのだそうです。そのときに活動が不十分だと悟らされ、亡くなった方の命を預かっているという気持ちでその後の貢献活動にますます力を入れていくようになったのだそうです。

とても一枚では書ききれない大里綜合管理の取り組みです。今後も継続研究していきます。

新SVC通信 第346号(2010.07.26)より



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