いい会社視察記録

益田ドライビングスクール


島根、松江から車で延々3時間は優に車に揺られて、ようやく目的地益田ドライビングスクール(Mランド)に辿りつきました。島根という辺鄙な、そのまた果てにある自動車教習所に若者がわんさか押しかけて、その数年間6000人。とうとう日本でいちばん集客する教習所にまで繁栄しました。

何故、ここが選ばれているのでしょうか。

Mランドの特徴は「運転だけでなく心も磨く」としています。駐車場から玄関に行く道すがら、いかにも今どきといった感じの若者たちから、次々と「こんにちは!」と声が掛けられました。これが噂の挨拶かと実感しました。

ランドといっていますが、そこはもう別の国でした。実際、ここでは独自通貨「Mマネー」が発行されていて、教習生は卒業までの15日間、飲み物を買うのも、売店で日用品を購入するにも、テニスをするにも、岩盤浴に入るにも独自通貨をもっていないと生活が出来ないのです。

1ダラーは100円の価値に相当します。ちなみに缶コーヒーは1.2ダラー、日用品・雑貨等は1~19ダラー、テニスは2ダラー、岩盤浴は3ダラーと料金設定されていました。このMマネーは、ランド内でボランティア活動をしたり、誰かからサンキューカードをもらうなど貢献や感謝の行動をすることで得ることが出来ます。ちなみにトイレ掃除をすると初回に12ダラー、2回目以降は5ダラー、誰かに感謝をおくるサンキューレターを投函すると1ダラーをゲットすることが出来ます。


実際にトイレ掃除をした教習生はこんな感想を寄せています。

教習所に車の運転免許を取りにきて、トイレ掃除をして感謝の心を学ばされるとは驚きです。これだけではありません。Mランドではたくさんのイベントが用意されていて、チームワークの大切さや達成感、また仲間との絆づくりの体験など免許を取得するまでの間に集団生活で大切な利他の心を学んで卒業していくのです。

ただ単に免許を取るだけでなく、人としての人間力をUPさせることができる教習所だったのです。見事に有効供給(他にはない唯一性)を生み出していたのです。


益田ドライビングスクールの小河二郎会長は、なぜ教習所を設立したのかということについて、こんなことを語られていました。

創業の動機からして完璧に利他だったという訳です。素晴らしい理念です。創業したのは1964年、まだまだ当時は免許取得者は希少価値がありました。東京に出て行った地元の若者にとって、強力なセールスポイントになったであろうことは容易に想像できます。

しかし、時代は免許を持っていて当たり前の時代へとなっていきます。地元の若者だけを顧客にしていては、事業の継続が難しくなるのは明白でした。そこで合宿制の免許取得サービスを業界で先んじて展開したのでした。そして、今のような運転免許という技術に加えて人間力という精神もまた身につけられるような付加価値を生んでいったのですが、それについては「心の時代の到来を感じて、こういう経営になっていった。」と語られていました。

卒業生はこんな感想を寄せています。

小河会長は最後に「Mランド出身者から自殺者を出すのは恥ずかしいこと」と口にしました。事業を通じて自殺防止にまで寄与貢献していくことを志しているのでした。素晴らしい仕事をされているとただただ頭が下がりました。

新SVC通信 第381号(2011.04.18)より



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