いい会社視察記録

株式会社ECスタジオ(現ChatWork株式会社)


『日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方』という書籍を著した山本敏行さんが経営する株式会社ECスタジオを視察してきました。

オフィス内に電話がない、スタッフの机に引き出しがない、ペーパーがほとんどない、業務用コピー機もない…たしかに一見すると、えっと驚きの連続ですが、している経営は、理念経営をひたすら追求しているのだということが確認出来ました。

この会社が大切にしているもの、すなわち経営理念を追求していった結果、上記のようなワークスタイルが生まれているのです。

株式会社ECスタジオの経営理念について、山本さんは書籍で「ECスタジオで最も大切にしている価値観が「経営理念」です。」(35ページ)と明確に主張されています。同社の経営理念は「Make Happiness ~ 私たちはITを通して幸せを創りだします」というものです。同社の経営理念に謳われた‘幸せ’とは「心の豊かさ」であるとしています。仕事を通じて、社員が、その家族が、取引先が、顧客が、関わる人の心が豊かになるために同社は存在すると確認しているのです。

さらに「心の豊かさ」を実現させるためには、以下の3つの要素をITを通じて実現していくことが使命だとしています。


 仕事を通じて顧客の「売上アップ」が実現、社員は「給料アップ」が実現

 仕事の結果、顧客は「業務効率が向上」し「固定費削減」と「付加価値創造」が実現、社員は「業務効率が向上」し「残業が減る」「140日以上の休日」が取れ「有給休暇も100%」消化できる状態をつくる

 「顧客満足度向上」→「契約継続率が向上」、「社員満足度向上」→「やりがい」高まる

ECスタジオでは、上記の経営理念が実現出来るかどうかということが行動規範になっているのです。この経営理念に共感している社員を採用し、顧客と取引することを徹底しているのです。そして、それを実現するためのサービスが商品になっている訳です。

ITを使って業務効率を極めた結果、電話を使わない、ペーパーレスといった状態が創りだされていきました。そして自社で取り組んで効果が実証できたというものをお客様のところでも導入し、同じ効果を得ていただくことが仕事そのものになっています。

ですから、よくあるIT会社と違い、自社開発したソフトはほとんど商品として存在していません。グーグルなど既存のツールやアプリを使った仕組みや活用の仕方、工夫がこの会社の主力商品になっているのです。

例えば、プレイステーションを使って3万円でテレビ会議システムをつくる提案などです。同社のサイトの「サービス紹介」のトップには以下のようなメッセージがされています。

にわかに信じにくいことですが、代表の山本さん自身、ワード、エクセルは基本操作が出来るくらいのレベルでITには疎いのだそうです。だから、提供しているサービスはワンクリックで実現出来ることにこだわっていると言っておりました。

ITの技術革新があまりにも進みすぎ、凡人には何が何だかわからない世界に映ってしまいますが、これを中小企業が極めて廉価で活用しやすいように媒介することが同社のビジネスモデルです。百聞は一見にしかずということで、同社では実践研究会やIT飲み会、さらには1日就業体験など、実際に同社が創りだしている次世代のIT活用の仕方やワークスタイルに触れてもらい、見込み客に体感してもらうことも熱心に行っています。

実際のITツールだけではなく、全社員へのiPhone支給制度や強制退勤制度、社長とのランチトーク制度など、経営人事面でもユニークな制度が導入されています。社員満足、顧客満足に加えて、理念経営では家庭満足が重要であると考えていますが、この点については配偶者などパートナーが過去1年間に会社主催の飲み会に1度でも参加していれば14,000円が支給されるバースデー制度や、実家が遠い社員には年2回まで帰省時の費用に補助金が活用できるゴーホーム制度が設定されていました。ECスタジオの成功の鍵は「仕組みづくり」にあると感じました。今後も理念経営が研ぎ澄まされていき、同社はさらなる進化をし続けていくことでしょう。見守っていきたいと思います。

新SVC通信 第388号(2011.06.13)より



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