第1076号 <検証> 9年間何を実践してヒグチ鋼管は大賞受賞に至ったのか Ⅰ
2025.3.17
「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」に輝いたヒグチ鋼管。見事な結果を残されましたが、ここまで実践されてきた約9年間の取組みは、他社が模倣しやすい再現性があり、そのことが今回の偉業の価値をさらに大きく高めています。中小企業が永続のために何をしていけばよいか、確実な道標になっているのです。検証と解説をしていきます。
道標1)経営者が心を整える
現在、赤字であろうと黒字であろうと、これから幸せ軸の経営に邁進すると1000%決意を固める。この経営者の本気度が必要不可欠。そして、以後、悩んでもぶれずに、絶対に幸せ軸で会社をよくしていく、よくなると信じる。
まずは、トップが業績軸から幸せ軸へ経営のあり方を変えていくことへ不断の決意を固めることが出発点です。樋口浩邦社長は、GCC(グッドカンパニークラブ)に参加したことがきっかけで幸せ軸の経営で抜群に輝いているヘッズさんを知り、開眼。すぐに拙著「人本経営」を読了してくださり、業績軸から幸せ軸へ経営方針を改めることを決意して行動に移されています。
道標2)理念を幸せ軸に置き換える
人本経営者として心が整ったら、次は、その意思を経営理念に反映させていく。どのような理念にしていくは、もちろん経営者の思いなので自由。ただし、絶対に入れる必要がある文言がある。それは「社員の幸せ」を目的にしていくということ。
開眼した樋口社長は、経営方針の一つに「社長は社員とその家族の幸せと健康を第一に考え経営します。」と謳いました。ヒグチ鋼管が手本にしたヘッズさんでも当初、社是に「社員がしあわせになり、支持され、成長する会社になる」と明示されています。社員の幸せ追及という文言を経営理念、すなわち一丁目一番地に据えることで、それが経営判断の拠り所になっていくのです。
道標3)社員が健康になっていく施策を講じる
想いが固まったなら、次は必然的に行動。目に見える風土へ変化していくまでは、当然、それなりの時間がかかる。よって、そこはすぐに期待せず、まず、会社は幸せ軸へ変わろうとしていると社員がわかる施策、すなわち、社員が健康になっていくための施策を講じていく。
現状の企業体力で出来ることから始めればよいのです。貧乏工場だった伊那食品工業を任された塚越寛さんは、牛乳1本の配給と休憩時間におやつ代500円の支給から始めています。
ヒグチ鋼管では、次のような施策を矢継ぎ早に導入しました。
- 有給休暇取得を推奨(制度より使える風土)
- 社員食堂で昼食と給食費補助制度(会社負担160円、自己負担210円)
- 子供手当(5000円/人)
- 非喫煙手当導入(5000円/月)
- 結婚祝い金(3~5万円)
- 出産祝い金(1人目10万円・2人目20万円・3人目30万円)
- 永年勤続表彰実施(10年目5万円・20年目10万円・30年目30万円)
人を大切にしていきたいという思いを手当てや補助で形にしていくのは、人本経営実践初期の段階では効果を発揮すると本事例で確認できました。また同時に、あらゆる階層の社員との対話会を増やし、さらに家族へ社内報の郵送や配偶者へ感謝(盆暮れ、誕生日に贈答品供与)も実践されています。こうしてヒグチ鋼管の人本経営はスタートしていきました。(続く)
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