第1070号 日本の宝 東海バネ視察記
2025.2.3
必ず視察に訪れたい会社であった兵庫県豊岡市の東海バネ工業株式会社様に、念願かなって1月31日にベンチマークをさせていただきました。
東海バネ工業ホームページ
視察前に圧倒された初めての体験
現在の高質な会社づくりに寄与された前社長で現顧問の渡辺良機様とは、ヘッズさんと共同発起し毎月開催しているGCC(グッドカンパニークラブ)へわざわざ足をお運びくださるので懇意にしていただいておりました。城崎温泉の旅館に視察に行くこととなり、ぜひとも、東海バネ様に寄らせていただけないかと申し出をさせていただいたところ、ぜひいらっしゃいということでこの度の視察が実現いたしました。そして、すぐさま社員の方から連絡があり、視察の要望や日程の確認のメールをいただきました。ファーストコンタクトから直前まで微に入り細に入り事前のお気遣いをしていただくその姿勢になんて凄いのだろうと圧倒されました。視察前までに10数回メールのやり取りをさせていただいた記録が残っています。とにかく、こうしてあげたいという思いがあふれていて当日が待ち遠しくて仕方なくなりました。それは、これまで890回を重ねた企業視察の事前やり取りで体験したことのない素晴らしさでした。なにせ視察後、いちばんにこの方に「とても幸せでした」と御礼を返したくらいでしたから、いかに感動していたかがわかります。
ブルーオーシャンに生きる
視察に行くと、夏目直一社長、坪口幸弘専務、そして主任の方が応対してくださり、これまた手厚く丁寧に同社の取組みや経営の考え方、大切にしていること、そして心ゆくまで質疑応答に応じてくださいました。国内のバネ市場規模は3000億円でバネ関連業者は3000社がひしめき合っていて、市場の半数を占める自動車業界、35%の家電業界で各社はしのぎを削っていますが、同社はそこには目もくれず、その他の領域で「単品のばねのお困りの方々のお役に立つ」ことを使命に徹底的な多品種微量生産で生計を成り立たせてきました。年間受注件数は2万件、平均受注5個という事業構成で持続し続ける驚異的な体制をつくりあげてきたことが同社の生命線で、それは他社が真似できるレベルになく悠々とブルーオーシャンを渡り続けているのです。「競争しない競争戦略」「非効率の効率」「不合理の合理」などという言葉で東海バネのここまでの取組みと成果を夏目社長は解説をしてくださいましたが、その成果はコロナ禍で新規取引が増加したという結果に正しさが現れました。他社に断わられ当社に何とかしてほしいという案件が急増したのです。
教育と研究開発という未来投資への見事すぎるその水準
工場内に「啓匠館」と称されたひと際、目立つ建物がありました。直感的には、同社が生み出した過去の象徴的な製品の展示をしているのだろうなと感じる体でしたが、実は、ここは社員教育のための施設として建設されたのです。入口には「東海らしく」という文言が彫り込まれていました。年間1人あたり10万円もの教育費をかけているということです。人本経営の指標としては5万円で合格ですから、遥か上をいく水準です。もちろん技術力の形成に力を入れていることは言うまでもありません。事務系の社員までが、業界の1級金属ばね製造技能士などのライセンスを取得するために己を磨き誰がどのような専門性を身につけているかが館内にはビジュアル化されていました。そしてここでは思考力、組織力、知識力が社員教育の重要テーマとして掲げられ、社員が教育者となって様々なカリキュラムが消化されています。人間学や理念・らしさ教員は社長自らが主管となって実践されています。未来工業の「常に考える」が髣髴されました。それが、感動を覚えた冒頭の社員の方のアクションになったのだろうと腑に落ちます。そして、場内にはTOKAI LABという研究棟が設置されています。素材研究から力を入れ、社員の1割を超える人材が投入されていました。利益率の10%以上は確実に投入されているとのことです。まるで伊那食品工業だと唸りました。
同社のような中小企業があるが故に日本がいい国であり続けられるのだとまざまざと実感させられました。改めて人本経営の大切さとこの伝道に命燃やしていこうというモチベーションが高まりました。
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