第1065号 「いい子症候群の若者」処方箋
2024.12.16
前号でいわゆるZ世代は「いい子症候群」の特徴を持つ若者たちが多いということを報告しました。それなりの反響をいただきました。目立ちたくない、決められない、安定している仕事がいい、評価されるのが怖いなどの「いい子症候群」の特徴は全て、自分に自信がないことが原因で生まれていると大学教授の著者は解説し、大学生に自己評価のアンケートを取ると、積極性、自己肯定感が非常に低い結果となるといいます。しかし、人本経営に成功している会社での新卒たちは、自律自発性に優れ、前向きで存在感があります。どうすればそうなるのか今週号では処方箋を考えてみることにします。
処方箋1 学校と社会は違うということを知らしめ気づかせる
前号でも紹介したZ世代がとても元気な居酒屋「とりのごん助」を経営する有限会社ライト・ライズ寺本幸司社長は、甘やかすのと大切にするのは違うと若者たちに伝えるべきこと意志をもって伝えていくことが重要だと提言されています。まずもって新人たちに伝えることは「学校と職場の違い」だそう。学校はお金を払って学ぶ場所だから、学校でのあなたの立場はお客さんです。でも職場は「お金をもらって働く場所」になったので、この場では「貢献してお金を得る」のです。それがあなたの立場の役割だと伝えます。新人に「与えてもらう立場」から「与える側の立場」に変わっているという事実に気づくよう認識してもらい、立場をお客さんから与える側に意識を切り替えていくそうです。ことあるごとに「与える側の立場で考えてごらん」とこの質問を繰り返し自分の立場や役割を考えさせる事を投げかけているのです。それだけで若い人たちの仕事に対する姿勢や物事の受け取り方や捉え方は確実に変わるといいます。ぜひ新人教育の時にはTTP(徹底的にパクる)していきましょう。
処方箋2 採用時に留意すること
新卒の求職者が殺到する伊那食品工業。本年の視察時に小口智彦常務が同社の採用について興味深いことを教えてくれました。それは「伊那食品工業では協調性と積極性の両極に秀でている者が採用されやすい」ということでした。「いい子症候群」の特徴から、協調性については高い者が多いのではないかと推察されますが、逆に積極性は前述のとおり低い者が多いとみられます。よって採用時にみるべきキーワードは「積極性」ではないかと考えられるのです。採用時のワークや適性テストなどで「積極性」が見出せるか留意しておくのです。そのうえで協調性にも問題ないという者を採用していくことが有効なのではないかと考えられます。実際、そういうタイプを採用していると人本経営指導先のクライアントで聞くことが多いもの確かです。
処方箋3 トクヨン診断「企画」or「実行」優位タイプの若者を一定割合で採用していく
これは当方の仮説ですが、1027号で紹介した特性で「企画」または「実行」に優位特性を示す若者を一定割合で採用していくことで受け身一辺倒でないバランス感のある若い人たちの組織づくりが実現していくのではないかと感じるのです。「情報収集」優位は聞き役が得意、「情報整理」優位は慎重派です。おそらく「いい子症候群」の若者はこの二つに優位が現れやすいのではないかと推測できます。実際、これまで数社でこのトクヨン診断したところ、若者からは「企画」優位の出現割合は低く、次に低いのは「実行」優位という傾向をつかんでいます。「企画」優位は現状維持なく改善志向、そして「実行」優位は行動力でチャレンジという目立つことが嫌いな「いい子症候群」の特徴とはほぼ真逆です。逆に言うとその特性優位をもった若者は貴重ということもいえるのではないでしょうか。そして仲間の中で少数派だったけれど職場で自身の特性を大いに発揮していいとなると才能が一気に開花しそうな期待がもてます。
処方箋4 支援型リーダーシップに満ちた組織風土、企業文化を醸成する
そして、やはり何といっても若者の自律・自発性を高めるには、やはり支援型リーダーシップ→763号・764号・765号に満ちた職場を形成して心理的安全性を高めていくことでしょう。「自分はこう思っているけど言っても仕方がない」とか、「言わないで従っておく方が楽だ」という感情をもつ若いメンバーが出ないように、何でも言える場づくり、土壌、企業文化を培っていくのです。リーダーはもとより全社員の支援型リーダーシップの実践が心理的安全性向上に大いに力を発揮することは確実と言えるからです。
間違ってもボスマネをしては「いい子症候群の若者」たちは去っていくだけでしょう。
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