第1062号 確実な持続成長は急成長より遥かに難しい

第1062号 確実な持続成長は急成長より遥かに難しい

企業の持続可能性が乏しくなってきている中、支援するはずの経営コンサル会社が2023年において倒産件数が前年比1.5倍に急増、過去最多を更新したと報じられています。→根拠記事

この出来事は、はっきりと明示されているとしかいいようがありません。すなわち、持続可能性が高まる幸せ軸経営を指導できない経営コンサルは行き詰まる業績軸経営の企業と共に滅失しているということです。

坂本教授の予言

数年前 恩師である坂本光司教授は法政大学院の講義で中小企業診断士を目指している受講者に次のように言い放っておられました。

「人を大切にする経営」を指南できる士業でないとこれからは仕事にならなくなる」

今、この予言が成就しているとしか思えないのです。しかし、簡単ではありません。

毎年少しずつ確実に成長するということは、逆に非常に難しく、むしろ時流に乗ったわずか2~3年の急成長の方が易しいと塚越寛さんは断じておられます。この記事で取り上げられた倒産した大阪のコンサル会社の事例は、その典型といえるでしょう。当初は人材育成のコンサルを手掛けていましたが、補助金ビジネスに進出し大儲けをしたものの、急成長の挙句、あっという間に倒産に追いこまれています。

弊社の教訓

自社の25年の歴史を振り返っても、教訓があります。創業当初、雇用助成金の受給支援コンサルティングを熱心に行っていました。全国の社労士にも呼びかけ、SVC公的助成金普及促進会なる組織まで作って活動していました。当時はバブル崩壊後の失われた10年という局面で、失業率が4%を超え時の政権が大型の予算を組み新規事業で雇用をすると年間の賃金の半額を6人まで助成するという大盤振る舞いな助成金が登場したのです。これに目をつけ、FC創業オーナーや起業したばかりITベンチャー経営者などを対象にセミナーやイベントを行っていきました。驚くほどの反響があり、瞬く間に急成長をしていきました。当時の売り上げ記録は未だに当社史上過去最高となっています。

自分の力でないと持続しない

しかし、それは助成金の力であって、私や自社の力でその結果がもたらされた訳ではないのは自明でした。政策は毎年変わるので、みるみるうちに助成金の内容も変化していきます。自助努力を国民に求めた宰相になると急速に助成金市場はしぼんでいきました。また不正受給が増えてくると審査はガチガチになり、手続きにものすごい労力がかかるようになっていきました。

なによりも助成金というカネで始まった顧客との縁は、カネが尽きるとほとんど持続していきませんでした。これでは意味ないと目が覚め、助成金コンサルからは足を洗いました。当時、企業社会では成果主義が隆盛を極めリストラも横行していました。日本的経営の良さであった労使協調路線が崩壊し、現場ではすさまじい勢いで労働トラブル、紛争が勃興していました。就業規則を強化すれば会社は守れるのではないかと徹底的に研究し、本を上梓するまでに就業規則の研究を極めましたが、しょせん性悪説の経営では会社がよくなるはずもありません。

出会えた奇跡と困難だった軌跡

悶々としているうちに社労士として10年が経ちました。ここでようやく何のために自分は社労士をしているのだという原点に回帰することになりました。そして労働紛争という不幸なことがない健全健康な職場づくりに貢献してこそ社労士の価値があるとようやく気づいたのです。そして世に誕生したばかりの名著「日本でいちばん大切にしたい会社」に出会うという奇跡が起き、今日に至ります。幸せ軸の人本経営、これを世に広めていくことだと悟りましたが、儲けることに血眼な経営者の心にはなかなか届きませんでした。それでも諦めず、15年間コツコツとやってきた結果、少しずつ良客にも恵まれ、道が拓かれてきました。自らの軌跡をふりかえると世のため人のためになり自社も持続していく事業を継続していくことは時流に乗った急成長より、本当にはるかに難しいものだと塚越さんの言を肌身で感じるのです。

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