第1059号 塚越寛さん、伝記本出る その四
2024.11.5
バブル崩壊の好業績時に社員へ訓示したこと
世の中とは全く逆のことをやり、快適さの追求と社員の幸せのためという大義のために、一見甘いと思われる様々な施策を実行してきました。
まさに大変危険なことを自らやってきたわけで、社長として、大変これからを心配しているわけであります。プレッシャーがかかっているのです。
自重を忘れない。不況下の経営を人為的にあえてやってみよう。
<小林コメント>
1962年に黒字化に成功以来、48年増収増益ということでそれは2010年まで続いた訳です。この間1970年代のオイルショック、1980年末期のバブル経済崩壊、2008年のリーマンショックと多くの企業の経営に打撃を与えた激動を伊那食品工業は乗り越えてきています。その都度、このように勝って兜の緒を締めよと社員に訓示してきたのでしょう。幸せ軸経営が塚越さんにとって「危険なこと」「プレッシャー」と感じていたというのは今回新たな発見でした。しかし、それでもなお「この道」こそが永続への一本道だと信じ覚悟し悩んでもブレずに貫き通すことでこそ成就していくのだと改めて学びになります。
社員の言葉
常に社員のことを考えてくれます。‘毎年給料もボーナスも上げるぞ’って約束してくれ、実際に給料とボーナスが下がったことはありません。それだけの利益を出すなんて、そんな簡単なことじゃないですよ。それを何十年も続けるって本当に大変なことだと社員もわかるんです。だからもっと会社に貢献しないとこの体制は崩れちゃう。自分たちも生半可な努力じゃダメだってことになるんです。
「利益それ自体に価値はない。利益をどう使うかによって初めて利益に価値が生まれるのだと私は思います」
<小林コメント>
社員を少しでもいい環境で働かせてあげたいことを一心に邁進し、現実にそれが目の前で継続的に展開され続けていくと、社員の会社に対する絶大な信頼感の醸成とやってやるぞとヤル気が120%充満が実現されてくることがわかる語りです。社員に信頼してもらうためにはトップが社員をとことん信じるところから始まるのだとこれまた改めて学ばされます。
いい会社とは
「月日を重ねるにつれ、より快適で楽しい職場になったり、精神的に豊かにならなければ毎日働く意味がありません。しかるに最近の企業は、手段であるべき売上や利益を目的とはき違え、厳しいリストラを行って、あるいは福利厚生をやめ、快適職場をやめ、単に数字上の利益のみを追求するようになっています。
快適さの進歩に感謝しつつ、苦しかったとき、みすぼらしかった昔への想いを馳せ、さらなる快適さを求めてゆかなかければなりません。また私たちがかつて多くの人々の援助を受けたことを忘れず、出来る範囲で社会への還元や奉仕を行ってこそ’いい会社’なのです。
<小林コメント>
本当にその通りだとしか言いようがありません。利益は会社に集う、あるいは関係する人々をより幸せにするために使われてこそ価値があるのです。利益があるから人本経営が実現できるのでもありません。伊那食品工業は掘っ立て小屋の赤字垂れ流しの貧乏工場からのスタートなのですから。評伝の帯にこう記されています。「利益は大いに出そう。ただし、その目的は社員をしあわせにするため」経営者の皆さん、改めてこの言葉を噛みしめて幸せ軸のギアを上げていきましょう。~以下次号
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