第1056号 塚越寛さん、伝記本出る
2024.10.15
伊那食品工業の塚越寛さんの半生を書き下ろした伝記が世に登場しました。
人本経営成功経営者による書籍ではなく、ご本人の生涯にフォーカスした本は珍しいです。早速、購入し読了いたしました。これまで13度同社をベンチマーク視察させていただき、ご当人とも6度接見し、だいぶ理解は促進できているという自信がありますが、それでも初めて知り得たことも多く、大収穫となりました。塚越寛さんの物語を紹介させていただくことにいたしましょう。
成長について
不況などにも大きく左右されず、低成長でいいから昨年より今年、今年より来年と確実に成長していくことが大切ではないか。成長は単なる売り上げや企業規模ということではない。
社員が明るくなった、会社のイメージがアップした、人からいい会社になった
と言われることなども立派な成長である。そうしたことが社員のしあわせに繋がっていく。社員がしあわせを感じられれば、モチベーションが上がり業績も向上し、結果的に社会に役立つ企業へと成熟していく。
<小林コメント>
急成長を戒め、安定成長を志す年輪経営、その年輪は業績だけではないという語りです。なるほど確かにそれだけではなく、社員が元気になり企業風土がよくなっていくこと、それはとても大事なことです。まさしく、幸せ軸の視点ですね。今後、人本経営の伝道の場で伝えていきます。
人格形成
7歳で父親を亡くす。母一人で6人兄弟を食べさせる。母親が人としての優しさ、心構え、ものの善悪や恥ずかしくない生き方を教えてくれた。極貧の幼少期。自殺しようとした母を助ける。
多くの教師や周辺の人の親切や情けに救われる。こうした原体験が人を大切にする経営の根幹になっている。
「貧乏して辛い思いをする。そこでかけていただいた親切が私をつくってくれた」
<小林コメント>
どん底の幼少期、極貧生活を強いられながら、人の情けに触れ助けられたことが、その後の塚越寛さんの幸せ軸経営の発想の原点にあることが改めて理解できました。恩を忘れず、恩送りする、この姿勢こそが良き人格形成には欠かせないと改めて感じました。
死と向き合った青年期
東大に行けるほどの秀才で屈指の進学校に進む。しかし、高校2年に結核を罹患。3年にわたる隔離闘病生活、高校中退。
父親、兄、姉の3人が結核で亡くなる。健康に対する人一倍の思い入れが芽生える。
「貧しさと病気は、神様が私に与えてくれた貴重な試練」
「最低の人生を送ると、あとは上がっていくだけだ。一生かかってあがっていけばいい。」
<小林コメント>
どれだけ哀しく辛く、苦しかったことだろう。しかし、それをバネに変えていく不屈の精神は凄いの一言です。起きる出来事を恨まず、自身の人生にとって深い意味があると受け止めて、今より良くなっていくための糧にしていくこと、これまた大事な生き様といえるでしょう。
弊社では「社風をよくする研修」で、まさしくこの自分の身に降りかかる出来事を「これでよかった」と意味を好転させることをモチーフにした体験ワークを考案していますが、今後、この塚越寛さんの言葉と思いをその際に紹介していくことにいたします。 ~以下次号へ続く
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