第1053号 岩の湯視察記2024 本気の正体を悟る
2024.9.17
9月10日から11日の2日間、「壺中100年の会in長野2024」を開催しました。
初日、幸せ軸の岩の湯さんの世界観に触れました。参加者の感想、その後の懇親会の雰囲気が良すぎて凄かったです。明らかに皆さんの幸せ度が充満していました。
見事すぎる岩の湯の経営理念
社員の幸福実現という目的のため人格の錬磨向上を図りながら事業を限りなく成長させていくという岩の湯の経営理念とその実現度が見事すぎで参加者一堂驚嘆となりました。
家族なら血縁にあたる会社において「つなぐもの」である経営理念は命がこもっていないとただの額でしかないと金井辰巳社長は語られていました。
家業では限界があると企業への転身を図ろうと平成元年に巨額の設備投資を行い、そして大枚をはたいて著名料亭の料理人も引き抜きをして新装オープンしました。しかし現場は揉め事だらけで足元から崩れるように経営はあっという間に窮地に陥ります。料理人も1か月で退職していきました。
経営者団体なんてどこでも一緒だろうと高をくくっていましたが、所属していた中小企業家同友会で経営指針の策定に迫られ、悪戦苦闘します。そこで尊敬する先輩から、そんな思いでいるなんて「あんたの社員は可哀そうだ」とたしなめられていきます。何を言っている、可哀そうなのは俺だ、なんで社員は言うことを聞かない、社員になめられない会社をつくるという、オレがオレがの自己保身の精神でいることをすっかり見抜かれていたのです。
辿り着いた「幸せ軸」
反発しつつも、何のために自分は何をやるのか、という自問自答をしていくと、いろいろと去来しながら、もがき葛藤しながら、ふっと’幸せ’という言葉が浮かんだというのです。すると先輩が云った「可哀そう」の意味がわかったそうです。たった一度の人生、価値ある人生にしたい、これは社員一人ひとり皆そう思っているに違いない、だから人生を賭ける価値ある会社が必要だと金井社長は、「我々は幸せをアートする」という幸せ軸の理念を掲げ、本気で取り組んで行きました。
旅館業だからといって、社員が家族との絆が一番大事な時を疎かにしていては幸せ実現は叶うまいと、盆、クリスマス、年末年始を休みにする旅館をつくって行ったのです。いわば書き入れ時を休みにするという業界の常識ではありえない経営です。
本気ということの意味
幸せ軸の経営の実現に本気になるということの意味は、社員の幸せ実現のためには目先の利益ではあるものの幸せ軸の経営実現に寄与しない顧客を失うことを恐れない、そしてその行動をすること。これが本気の正体だと今回、岩の湯のベンチマークで悟りました。
そこまで社員を信じれば社員もとことん会社を信頼してものすごい仕事をしてくれるのです。それがあの岩の湯の社員の皆さんの心からの笑顔を生み出し、業界ではありえない接客レベルや極上の居心地を生み出し、お客さんは自分でも気づかなかった生きることの幸せ充足感という宝石をみつけていくのです。だから、またここへお客様は理想土だとかえってくるのです。それが日本一予約が取れない旅館という現実をもたらしています。幸せ軸の経営って本当に素晴らしい。強くてかっこいい。
2日目に訪問した幸せ軸経営の最高峰伊那食品工業の塚越英弘社長もこう語られています。
「私たちの会社において、自分たちの軸になるもの、絶対ぶれないものは何かと考えると「社員の幸せ」です。お客さんが大事でも自分たちが困ること、自分達の不利になるような話だったら、いくらお客さんが大事とはいえ、それを断る。信念を崩してまで仕事を取りに行く必要はない。本気で、形だけではない。それがないと結局どこかで変わってしまうこととなり、意味がなくなりますよね。経営の前に経営者自身の信念、やるべきことは何なのかというぶれないものがないといけない」
幸せ軸経営実現を目指す経営者が今こそ、肝に銘じてすべきことが明瞭、明解に示されています。
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