第1051号 最高峰の人本経営企業後継者が語る経営でいちばん大切なこと

第1051号 最高峰の人本経営企業後継者が語る経営でいちばん大切なこと

業界紙である日本食糧新聞のサイトに2024年8月30日付けで食品企業におけるパーパス経営の先進事例:伊那食品工業・塚越英弘社長に聞くと題された記事が掲載されていました。相当量のロングインビューですが無料で閲覧できます。後継者として人本経営の最高峰の企業を引き継いだ思いがてんこ盛りのとてもいい内容です。

後継者の気概

後継して6年目になった塚越英弘社長。先代が人本経営を実現していても後継者問題は、やはり別格のむずかしさがあると感じでいます。ご自身はどういう思いで後継していたのでしょうか。

「引き継いだ時点で経営スタイルを全く変えるつもりはなかったですね。創業者のやっていることの意味を自分なりに考えて、自分なりの捉え方で考えようと思いました。今、当社がやっていることには、どういう意味があって、一番のポイントは何か。それを自分なりに全部考えてみて、形として少し進化させていこうと考えて取り組んでいます。」~以上引用

不易流行の実践をしているということが伝わってきます。どうしても経営者として色を出したくなるのは人情でしょう。しかし、いつまでも変わらない本質的なもの、すなわち不易が後継者にはいちばん大事であるという強い意志、気概が伝わってきます。

伊那食品工業の不易

伊那食品工業が変えない本質とは何でしょうか。

「私たちの会社において、自分たちの軸になるもの、絶対ぶれないものは何かと考えると「社員の幸せ」です。全ての軸を社員の幸せという軸で判断すれば、そんなに難しい判断ではないと思います。この会社の形を残すとか、会社を大きくするということは大事じゃないわけです。それよりも、社員を一番大事にするという、この理念を貫くことが一番大事なことだと思ってます。お客さんが大事でも自分たちが困ること、自分達の不利になるような話だったら、いくらお客さんが大事とはいえ、それを断る。社員ファーストで考えています。社員が困ることだったら、いくらたくさん売れることでもやらないということです。」~以上引用

幸せ軸、一徹です。インタビューの中で徹頭徹尾、社員が幸せになることが最優先で売上すなわち顧客は二の次にとらえているということが揺るぎなく伝わってきます。それに対する鋼鉄のような信念が明確に引き継がれていることがわかります。そのことが現実に日々繰り返されていくので、社員たちもまた会社を信じ切って、昨日より今日を良くしていくための取組みに専念していき結果としての業績の年輪を重ね続けているという真実の学びがあります。

他社に足りないもの

インタビュアーは他社が御社のようになるための視座を塚越社長から聞き出そうと幾度となくチャレンジしています。それに対する塚越社長のアンサーはこうです。

「企業経営に対する考えの入り口が違うということですね。方法じゃない、意思なんだと。ちょっと厳しい言い方をすると、皆さん、パーパスとか社是とかいう言葉を使って、結構考えていらっしゃるように思いますが、みんな本気で思っているわけではないように思います。今の私たちの経営を考えてみると、パーパスという言葉を使うことは、少しなじまないように思っています。わが社の取組みは、収益重視ではなく、社員重視です。私としては、儲けたくないというわけではないですが、急激に伸ばしたくはないです。信念を崩してまで仕事を取りに行く必要はないということですね。本気で、形だけではないところです。それがないと結局どこかで変わってしまうこととなり、意味がなくなりますよね。経営の前に経営者自身の信念、やるべきことは何なのかというぶれないものがないといけないと思います。」~以上引用

業績軸を明確に脱し、幸せ軸の経営を本気で実施しきることそこにぶれないこと、トップの意思と行動として、これを出来るかに尽きるのだと改めて感じさせられるインタビューとなりました。

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