第1050号 幸せ軸経営の革命が多くの業界で勃興し始めている
2024.8.26
生産年齢人口、すなわち基幹の消費者層が減り続けているため、わが国では多くの産業が斜陽化してきていることはこれまでもお伝えしてきました。
コンビニよりも多いと言われた歯科医院も本年の上半期、倒産件数が過去最多ペースになっていると報じられました。→ 歯医者が次々と廃業する意外な原因
とうとう歯医者も人口減少で斜陽産業化し始めたのかと思いきや真相は違うことがこの記事でわかります。なぜ歯科医院が減っているのか、その理由は「日本人のむし歯が減ったことが大きく影響しているから」だというのです。この記事をみて、「あっ!」と声をあげてしまいました。
歯科業界を変えたヨリタ歯科
歯科医院で幸せ軸の経営に成功しているといえば、大阪にあるヨリタ歯科です。33年前に創業した寄田幸司院長は、これからは歯科医院もホスピタリティが大事だと歯学部時代にホテルやレストランでバイトして接客の技術を学び、気楽に通えるクリニックづくりを目指しました。すぐに評判を呼びたくさんの患者さんがつきました。技術も最先端の研究を怠らず磨いていました。しかし、ある時、寄田先生は自分の仕事に疑問をもちました。長寿国の日本人はなぜ欧米先進国に比べて生涯自分の歯でいられる人が少ないのかということに。そして気づいたのです。
「いかに高度な治療や情熱を注いでも、むし歯や歯槽膿漏はなくならない。歯をけずればけずるほど、治療すればするほど、新たなむし歯や治療がふえる」
国民皆保険の日本では、虫歯になると歯医者さんに行って安価に歯をけずる治療をしていますが、欧米ではそれは手術並みの自費が必要になりますから、予防が発達していたのです。
気づいた寄田先生はけずらない歯医者という歯科業界に旋風を起こしていきました。予防歯科という新たなジャンルを構築していったのです。そして、生涯、健康な自分の歯で美味しい食事ができるワクワク楽しい人生を演出するワクワク楽しい歯科医院という幸せ軸の経営を見事に昇華させていきました。このくだりについては、542号でご紹介させていただいた通りです。人本経営に成功した会社は、自分さえよければという思想は毛頭なく業界全体をよくしていくということに実に熱心に取り組まれていかれます。ヨリタ歯科もまた同様で、同業の歯科医院のドクターや衛生士に惜しげもなくノウハウを開示し、実際、全国に同様のヨリタモデルを普及させています。ホワイトニングや歯科矯正などの審美歯科を掲げるクリニックは街に珍しくなりましたが、その先駆けがヨリタ歯科であり、その影響によりすっかりと業界のトレンドが変わったのです。これはまさしく革命であり、だからこそこれほど急速に社会の歯に対する健康の考え方が変わったのだと思うのです。
多くの業界で同様の人本革命が起きつつある
急速に増えてきているとはいえ、業績軸から幸せ軸へ転換に成功した企業は各業界ではまだ少数派です。しかし、その影響力たるや強大で、歯科業界で起きたような革命的な出来事がこれからいろいろな業界で派生的に起きてくるという予感がしてなりません。
いや実はすでに起きていると感じられます。例えばキャリーバッグ。それまでは二輪で引きずるタイプしかありませんでしたが、幸せ軸のスワニーが考案したのは足の不自由の方の支えになる寄り添う四輪タイプのもの。いまや主流となっていることは疑いようがありません。
介護シューズも徳武産業の「あゆみシューズ」が爆発的にヒットして、靴業界では非常識と言われた片足販売が当たり前になっています。
そして、当方が活動する経営コンサルタント業界。実は昨年は経営コンサル会社の倒産が前年比1.5倍に急増、過去最多を更新しています。坂本光司教授は予言していました。「人を大切にする経営を指南できる士業でないとこれからは仕事にならなくなる」これが成就しているのです。業績軸しか指導できないコンサルは価値を失い急速に失速しているのです。目を凝らせば他の業界も確かに起きていると気づけるはずです。今、人を大切にする経営が燦然と輝く時代を確実に迎えています。
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