第1048号 会社が行いたい現実的・実践的な介護と仕事の両立支援策
2024.8.5
実際に親に介護が必要になった社員が発生したときに備えて企業でしておくべき現実的かつ実践的な対策について検討をしていきます。
ステップ1 現状の規定の確認
介護休業法に基づき、すでに就業規則において規定されている介護と仕事の両立支援の規定内容について確認しましょう。介護休業は3回まで通算93日間が法定です。また介護休暇は5日間、そして希望者に対する残業免除、希望して残業はさせたとしても1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせることができません。深夜労働もできません。他に以下のいずれかの両立支援の措置を講じる必要があります。
短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護にかかる費用助成
ステップ2 柔軟な対応を検討する
介護が必要になった社員との面談により、どのような働き方を望むのか十分に話し合い、必要に応じて現在規定している両立支援措置以上の対応を検討し、場合によっては規程を変更していきましょう。
ステップ3 積立有給休暇制度を新設する
年次有給休暇は行使しないと2年で時効にかかり消滅していきます。入社後、健康で精力的に働いている年代では、年間最大20日付与される有給休暇を行使しない労働者も少なくないでしょう。そこで、有効期間(2年)を過ぎた年次有給休暇は20日を限度として積み立てることができる積立有給休暇制度を新設して導入をしていくことを奨めます。使用目的は、介護休暇は当然のこととして疾病休暇、子の看護や入園式など育児目的休暇というライフサポートでの利活用に限定します。
介護休業の実態
介護の期間はどのくらい必要になるのか
公益財団法人生命保険文化センターによると介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1カ月(5年1カ月)となっています。→ サイト
もちろんケースバスケースですが、平均値は対策やそのための制度設計を考えていくうえでは現実的な数値といえます。
介護休暇をどのくらいしているか
介護のための休暇日数について、理想は平均4日取得、実態は平均1日未満(年間)とのマイナビのデータがあります。→ サイト
実は、法で規定されている介護休業は、この資料によると利用率は 11.6%にとどまっています。介護休業は自らが介護をするための日数ではなく、親が介護になったときに役所での手続きやケアマネジャーとの相談やケアプランの作成、そして実際に介護サービスを受けて介護体制を整えるための休暇です。介護休業は通常の企業では無休としているケースがほとんどでしょう。賃金の67%は介護休業給付金が国から支給されますが、この資料によると月々要する介護費用は平均8.3万円とされていますので賃金を減額される介護休業を活用しようという選択は社員としては行いにくいのです。そこで現実的には有給休暇を充てていくことになりますが、行使できる日数には限度があり不安を覚える社員もいることでしょう。そこで積立有給休暇制度なのです。上記の介護期間、休暇日数の平均値からすると年間4日×5年=20日が現実的な対応と考慮してこの日数にした訳です。
この制度は社員にとっては有難く組織へのエンゲージメントを高めることになるのは確実だろうと考えます。実施していく場合には、両立支援等助成金介護離職防止支援コースの介護両立支援制度活用の対象になると考えられます。対象者が出ると30万円、年間5人まで助成金が支給されます。無理がなければ制度を活用して介護と仕事の両立支援体制を構築していくことも一考です。
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