第1047号 2024年企業社会の未来予想図

第1047号 2024年企業社会の未来予想図

本通信をメール配信希望をされている方には、記事本文とは別に「最近の経営人事関連ニュースに触れ思うこと」というタイトルで情報提供をしていますが、現代日本に暗澹たる気持ちにさせられずにはいられません。改めて今週号では、今の日本企業社会を振り返ってみることにします。

減り続ける日本人の所得

2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況~1年で21万5000円も所得減る

諸物価が高騰する中、1世帯当たりの国民の平均年間所得が減り続けています。この1年で20万円以上、3年前からは40万円も減りました。このことは岸田政権の「三位一体の労働市場改革」~労働生産性上昇、実質賃金の上昇につながるリスキリング、ジョブ型の導入、労働市場の流動化という3年にわたる政策が大失敗に終わったことを意味しています。4万円の定額減税をしたと鼻高々ですが一桁足りないのです。ジョブ型という見た目を変えただけの成果主義を政府が主導し、安定した雇用状況を破壊しているのです。この推進のために雇用助成金に予算をつけているのでたちが悪すぎます。目先の改革路線ではもう埒が明かないことははっきりしました。今とは真逆な長期視点の「幸せ軸」の経営を実現することを支援する政策こそが必要です。それは立憲民主党や共産党といったさらに改革に走る政治から生まれるはずもなく、腰の据わった保守政策でこそ叶います。それを実現しようとする勢力は存在はしていますが実権を握るのは至難の業かもしれません。不幸な状況ですが、せめて政治がまともな経営を阻害することは断じて辞めてもらいたいものです。

ますます企業経営を深刻にさせる高齢化の現実

中小企業に忍び寄る高齢化~日本の社長は3人に1人が70歳以上、後継者未定127万社

わが国の企業の数は最盛期の1986年の535万から2021年の337万へとすでに約6割にまで減じています。そこに持ってきて、なんとか存続している337万のうちの約4割が後継者不足で倒産もしくは廃業の可能性があるというのです。すさまじい現実です。さらに団塊の世代が後期高齢者に突入し、企業ではまもなく未曾有の数の親の介護と仕事の両立に直面する中高齢労働者を生み出していきます。二重苦、三重苦といった負の連鎖です。まさしく四苦八苦です。

経営者の意識の低さ

人的資本経営, 中小企業の取組状況は? 7割の経営者が「知らない」

こうした状況下で、全国1000社近い中小企業経営者へ実施したアンケート結果によると、人的資本経営について「知っており、他の人に説明できる」とした人はわずか3.8%にとどまり、「人材育成」に8割の経営者が投資してないという愕然とするニュースが報じられました。危機意識がないのか、あまりの現状に途方に暮れてしまっているのかは判然としませんが、これではますます行き詰まり倒産件数は確実に増加していくに違いありません。

しかし、一方で希望もあるのです。

増える「幸せ軸」実現企業

本年の「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 過去最高の応募と受賞数

今回は過去最高の185件の応募があり、審査委員長を務めた赤岩茂・同学会副会長は「世の中が変化し、業績重視でなく働く人の幸せを第一に考える経営が広まっていると感じている」と講評しました。当方が人本経営の伝道を始めたのが15年前です。当時は100社あれば1社すなわち1%の企業しか「幸せ軸」の経営を志向していないという感覚でしたが、現在では20%位に広がっているという手応えをもっていますので審査委員長と同意見です。

ここまで考察をしてきた結論は、経営のあり方を「幸せ軸」へと変貌を遂げ人々に選ばれる天国企業と「業績軸」に拘泥してのたうち回る地獄企業の二極化がこれから究極的に際立っていくのだろうという未来図しか見えないということです。

業績軸の経営者の皆さん、打つ手はひとつしかないのです。これが現実です。覚醒しましょう。

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