第1045号 介護と仕事の両立支援に成功した事例に学ぶ

第1045号 介護と仕事の両立支援に成功した事例に学ぶ

「仕事を通じて社会貢献をしていくことはもちろんのことです。それだけではなく会社が維持発展していくのは何のためにかというと、社員の人たちに少しでも多くのものを還元して幸せな生活をしていってもらいたい、そういうのが会社の目的だと思っている。社員にはそれぞれ人生がある。その人生の主人公として、より良い人生、より良い生活を送っていってもらう。そのための土壌を整えること、それが会社の使命、役割である。だからこそライフ・ワーク・バランスを導入するということをわが社は軸としてぶれずにもっている」

この発言は、東京にある中小企業、株式会社白川プロの白川亜弥社長の語りです。

明確な「幸せ軸」が確立されていることがみて取れます。

同社は社員の介護と仕事の両立支援向き合うことをきっかけに、代表がこのような思想を色濃くしていったそうです。

同社のホームページをみると、基本給の8割を支給する看護休暇・保育休暇・生理休暇・産前特別休暇(つわり休暇)といった法定を超える支援休暇制度や育児奨励金の支給、時効で消滅した有給休暇を40日間積み立て介護、疾病、子の看護、育児目的で使用できる積立有給休暇制度など充実した制度が導入されています。

会社の独りよがりにならない

今でこそ、こうした立派な制度が用意されていますが、白川社長は、当初、会社が良かれと思って制度を用意しても社員の反応は「いまいち」だったと回想されています。社員との対話、介護経験者同士の対話、管理職への啓発、社内セミナーといったことを繰り返し、思いを伝えていくことで、社員が自身のおかれた生活と仕事の両立のためにこうしたい、こうであれば助かる、という意見をくみ取り、生活と仕事の調和を図るために、会社としてやれることは何かを形にしてきたのが現在の制度だということです。会社も社員も独りよがりにならないということが介護と仕事の両立を有効に実現させていくためのポイントだということがわかります。

個別対応がすべて

初めに制度ありきではないのです。育児もそうですが、いわんや介護に至っては、社員の数だけおかれる状況は様々です。よって、起きたケースに対して個別対応していくことが必須です。したがって、まずは介護が必要になったときは、社員が自分で抱え込まず、会社に報告、相談しようと行動ができるかどうかです。このためには普段から、社員に対して、会社の考えを伝え、会社は生活と仕事を両立には理解があると安心感をもってもらう風土をつくっておくことが必要です。

社員の介護状況を把握する

風土づくりの一歩目として、全社員を対象に介護に関するアンケート調査を実施していきましょう。ひな形 白川プロで実施したところ6割の社員が介護のリスクがあると回答したそうです。調査結果を社内にフィードバックしていくことで会社が介護と仕事の両立に関心をもっているということが伝わります。同社では同時に介護と仕事を両立するために社員にとって最もよいと考えられる方法をまとめた『仕事と介護の両立 事前の心構え』というパンフレットを作成し啓蒙していきました。

相談体制の充実

介護が必要になったときに、社内のどこの誰に相談すれば明らかにして、介護はプライベートな問題で会社に相談するようなことではないという意識を払しょくします。介護について会社が社内制度を整備し、社員に様々な形で発信しているうち白川プロでは育児と仕事の両立もはかられ、介護、育児を理由とした離職はゼロになっていったそうです。そうした取り組みが東京都などで表彰され、それが今、採用面でも有効になってきているとのことです。まともに介護と仕事の両立支援に取り組むと「お互いさま」「おかげさま」の企業文化が図られ幸せ軸が打ち立てられてくることは間違いないものと考えられます。今極めて重要な経営人事課題といえるのではないでしょうか。

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