第1044号 社員の家族に介護が発生、その時どうする?
2024.7.8
1040号「迫る介護の2025年問題」で、来年から団塊の世代が後期高齢者(75歳~)に突入し、伴って要介護状態になる高齢者がこれまでの感覚では考えられないくらいに増えてくるので、明日、わが社に親が介護状態になりましたという社員が急増してくると警鐘を鳴らしました。先週、毎月定期訪問させていただいているクライアントでも、人事担当者から「昨日、経理部の40歳代の社員から親が認知症を患い介護が必要となりましたと相談がありました」と報告を受けました。
皆さまの職場では、社員の介護問題への対策は大丈夫でしょうか?
先が見通せる育児と違い、先が見通せない介護と仕事の両立を実現させていくことは、育児と仕事の両立よりもはるかに難題です。
経営者、人事担当者、そして管理職は、この社員の介護と仕事の両立について、必要な対応をどうしていくかということを真剣に話し合う時間をつくっていくことが不可避になってきました。
介護と仕事の両立問題が発生し来ることが多く予見されている40歳~50歳代のベテラン、管理職といった中核期間人材を孤立させたり、耐えきれず離職させては、経営はガタガタになってしまいます。
この記事によると、仕事をしながら家族などの介護をする就業者(ビジネスケアラー)の人数は、2030年に約318万人になると推計されています。2023年の出生数は72万人でした。配偶者である男性の社員を考慮すると育児と仕事の両立の対象者は144万人です。介護と仕事の両立を考慮しなければならないのは、その倍にもなります。同記事では、仕事と介護の両立支援が導入されていると回答した人は2024年には26.0%と報じられています。多くの企業で介護と仕事の両立対策に未着手であることがわかります。
もし社員の家族に介護が発生したら
対策を考えいきたいという場合には、厚労省の「仕事と介護の両立支援~両立に向けての具体的ツール」というサイトで有効な情報収集ができます。ポイントは5つです。
ポイント1:職場に「家族等の介護を行っている」ことを伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度を利用」する。
ポイント2:介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」。
ポイント3:ケアマネジャーに何でも相談する。
ポイント4:日ごろから「家族と良好な関係」を築く。
ポイント5:介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する。
介護は「一人で抱え込まない」ことが何より重要と指摘しています。そのためには会社側の理解が必要不可欠であるということを意味しています。介護は誰もが直面する可能性があり、「お互いさま」という職場内での関係性が功を奏すとされています。
介護対策を契機に人本経営を実践してはどうでしょう
「お互いさま」そして「お蔭さま」の組織風土を醸成していくことは、仕事の都合よりも家庭の事情を優先していいという企業文化を一丁目一番地で開花させる人本経営のお家芸です。団塊の世代が後期高齢者になるということは、未曾有の数の要介護家族が社員に発生してくることを意味しています。これを乗り切るためには、単なる労務問題として介護と仕事の両立を対症療法的に考えるのでなく、今こそ、幸せ軸の人本経営を実現し「お互いさま」の企業文化を開花させる絶好の機会と捉えてほしいのです。冒頭の介護問題が勃発したクライアントでも人本経営は浸透していますが、さらに、その必要性を関係者は感じ取って、この難局を乗り越えようと意欲的になってくれています。団塊の世代が80歳代になり、要介護状態が多発してくるであろう前のこれからの5年間が本当に運命の分かれ目だという気がしてなりません。
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