第1042号 人本経営における社長の意味
2024.6.24
人本経営でも経営理念をベースにして、日々の企業活動を営んでいきます。
いわゆる理念経営です。
近年、パーパスという言い換えでさも新しい経営のような打ち出しがされていますが、伊那食品工業に視察をした際、塚越英弘社長は「今さらおかしい。それがあるから会社がある。本来そこを考えないといけない」とバッサリ痛快に語られていました。
実は、それ以前はビジョナリーカンパニーという表現で明確な経営理念を持っていて柔軟に変化をし続けている企業が称賛されていました。
理念を重視する点は同様ですが、人本経営とビジョナリーカンパニーにおいて、明確な相違点があります。
人本経営とビジョナリーカンパニーの決定的な違い
ビジョナリーカンパニーでは、理念そしてそこから描かれたビジョンに向けて代表者であるプレジデントが、社員に陣頭指揮を揮います。役割はボスでビジョンが具現化するようにマネジメントするスタイルです。
これに対して、人本経営における理念経営は決定的に異なります。
まず、言うまでもないことですが、幸せ軸で経営理念がつくりこまれていることです。
理念で定めた幸福追求、そしてその実現のために経営者がとる行動は、「やってみせる」になります。まず自らが率先垂範をしていく行動を果たしていきます。
ビジョナリーカンパニーでは、プレジデントが理念の上にいましたが、人本経営では理念の真下に経営者は存在します。
使用者ではなく、同志なのです。
人本経営において、社長の意味は、社員長ということになります。
幸せ軸の経営理念を実現させていくために、先頭に立って行動するその姿、背中と心に触れ、社長は本気だ、それならば自分も共感共鳴できると、鳴動が起きていくのです。
社員の反応がよくない社長へ
いい会社にしようと思って、社員に伝えているのだけれど、なかなか伝わらないもどかしさを感じていないでしょうか。
もしそうだとしたら、ご自身の行動を今一度ふりかえってみてください。
本気で幸せ軸で日々、行動しているでしょうか。
伊那食品工業の塚越寛さんはこう語っています。
「社員たちは、社長が社長の財産を貯めるために経営している限り、言うことは聞かない。お互い幸せになろうということが伝わったら、社員は心を合わせてくれる。」
今でこそ、刮目を集める「いい会社」になりましたが、約50年前、弱冠二十歳そこそこで雇われ経営者として赴任した時、赤字に苛まれ、いつ潰れてもおかしくない状態でした。
塚越さんがとった行動は、ポケットマネーで社員に牛乳1本を配給し、少しでもカロリーをつけてほしいと午前と午後の15分の休憩時間には500円分のおやつを提供したのです。ここから伝説となる伊那食品工業のいい会社づくりは始まったのです。
今度の社長、若いけど本当に自分たちのことを考えてくれているな、ならば一生懸命仕事に励もうと一人、また一人と心を合わせてくれ、傾いた事業は蘇っていったのです。
経営者は社員の代弁者、代表という心が、人本経営を開花させていくのです。
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