第1017号 アリからキリギリスになった日本、これ以上の時短はもうやめよう
2023.12.11
アリからキリギリスになった日本、これ以上の時短はもうやめよう
ことしの名目GDP・国内総生産でドイツに抜かれて4位になるという見通しが示されています。
世界に占める日本のGDPシェアは30年前の18%から6%程度に低下、
1人当たりGDPは直近で世界24位にまで後退し、
経済協力開発機構(OECD)によれば平均賃金も30年にわたり低迷し、
先進国で最低レベルとされています。
なぜ、こんな凋落の一途なのでしょうか。
物価優等生が国民の不満をおさえていた
これだけ低迷していると暴動も起きかねない事態ですが、物価が比例して高くなっておらず、
これまでは生活面での不満が表面化されなかったためと考えられます。
IMF(国際通貨基金)によるとわが国の35年前の1990年の消費者物価を100としたときに、
2022年は120.5となり、35年間で物価は1.25倍上昇しています。
しかし日本以外のG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国)各国では
30年間で200~250となっています。実に世界は桁違いに物価高騰しているのです。
米国にいくとラーメン一杯3000円という類の話はよく聞くようになってきました。
物価が安定していたために、賃金の上昇停滞がそれほど気にならなかったということが実態と言えそうです。
しかしながら、わが国にも遂に物価高騰の波が押し寄せています。
さすがに危機感を抱いた政権は急ピッチで最低賃金を上昇させています。
これから、わが国はどう経済社会の舵を切っていけばよいか、
かなり重大な岐路に差しかかっていると言わざるをえない状況下にあると考えられます。
わが国はもはや長時間労働国ではない
この30年間、わが国は欧米先進国から呪縛のように「働きすぎ」と長時間労働を指摘されてきました。
そして時の政権は、労基法を改正し週48時間労働から40時間へ法規制を強化し、
さらに「働き方改革」と銘打ち、さらなる労働時間の短縮を基本政策として推進してきました。
この結果、80年代に2100時間だったわが国の年間総実労働時間は、90年代に入ってから
ものの見事に右肩下がりに減じていきました。
2022年にどれほどまでに減ったかというと、なんと1607時間にまで短縮が進んでいます。
時短の当初の目標は2007年に連合が示していた欧米並みの1800時間に落ち着かせることでした。
その目標を軽く達成し、わが国はすでに世界平均に比べ、はるかに短時間労働国であり、
44か国中27番目、米国(12位、1791時間)より実に200時間近く短くなっているのです。
働かざるもの食うべからずとは当然のことです。
わが国の経済の衰退はこう考えると労働時間短縮に比例していると判断せざるをえません。
実際、厚生労働省の「毎月勤労統計」常用労働者1人平均月間平均給与額の推移をみると、
およそ30年間で500時間労働時間は減少したものの、給与水準は85%に減じており、
労働時間と賃金水準は明確に相関していることが確認できます。
そして肝心なことですが、結局、時短をしても生活は豊かにならず
少子化も歯止めがかからないことが露見したのです。
公務員が週休3日制導入という案も出されているようですが論外です。
わが国は気づけば働きアリから怠け者キリギリスに変貌してしまっていたのです。
俗にいう「ゆでガエル現象」で気づいたら死に至る危険な状況になっているのが現状です。
もうこれ以上の時短は亡国への一途になるだけだと断言できます。
楽しようとせず額に汗して働く勤勉さを取り戻しましょう。
何も長時間労働せよと提言している訳ではありません。
答えは年輪経営の実現
現行の労基法を遵守し週40時間で前年よりよい業績、昇給、雇用増を
何十年も重ねていくことができる経営が確かにあるのです。
それが伊那食品工業、未来工業を頂点にした幸せ軸の人本経営実践企業群です。
両社はいずれも50年近く所定労働時間を原則として年輪経営を重ねて事業を成長させ、
好報酬で処遇をし続けており、今年過去最高業績を更新したと報じられています。
伊那食品工業は毎年2%の昇給を続けてきているそうですから、
単純な複利計算でも30年前に比べ賃金水準は2.5倍になっているのです。
何を為せばよいのか。もう答えは明白ではないでしょうか。
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