第989号 幸せを実現する実務 ~ 実践編6.タテよりヨコの関係を大切にする
2023.5.22
幸せを実現する実務 ~ 実践編6.タテよりヨコの関係を大切にする
前号よりつづく
引き続き幸せを実現する実務論を展開します。
5)社員同士のオフサイト交流の場づくり
1 職務を離れて「みんなでやる」機会を創出し続けていくこと
2 オフサイトミーティングを社内会議のスタンダードにしていくこと
この項目は、人本経営において核心的に重要な「関係の質」を向上させ続けていくために、
欠くことができない重要な実務といえます。
日単位、週単位、月単位、年単位で「みんなでやる」機会をつくり、
タテではなくヨコでつながる場をつくり続けていきましょう。
具体的には次のようなイベントです。
<日単位> 朝礼/掃除/ラジオ体操/駐車場整列配置の順守/朝型出勤励行 など
<週単位> QC活動の定期開催/5S活動の進捗確認 など
<月単位> 委員会活動/クラブ活動/理念研修/オフサイトミーティング など
<年単位> 社員旅行/忘年会/地位住民との交流イベント(地域清掃活動、障がい者施設支援など)/
学生アルバイトへの謝意を示す卒業式/表彰式/合宿/事業計画発表会/
家族参加歓迎のバーベキュー大会/インターン受入れ/障がい者職場実習受入れ など
もちろん、これらすべてを実施することは必要ありませんが、
少なくとも各期間単位では必ず自社の社員が喜んで自発的に行動をしていくような取組を企画実施して
断続的に継続していきます。
もしも実施しても続かない、参加率が悪いとなった場合、
そのイベントそのものよりも、社員の意識状態に問題がある可能性があります。
後述する「社員意識調査」を実施し、組織の健康診断を実施し
不健全な要因を探り改善をしていきます。
社員も多種多様ですから、
イベントへの参加についていろいろ意見が出てくることは考えられます。
なぜヨコでつながることが重要なのかを繰り返し説き、
徐々に参加率の向上や自発性を増すように工夫をしてください。
ここでも「待つ」ことは重要なファクターになります。
「みんなでやる」ということの意味
人本経営のレジェンド、伊那食品工業が「いい会社」づくりのために大事にしているキーワード、
それが「みんなでやる」ということです。
同社では自律自発的に行われている毎朝の清掃、自分たちが手づくりで行う社員旅行、
6月に行われている500人の全社員総出で1日1万人の方におもてなしをするかんてんぱぱまつり、
年2回の全体大掃除、漬物づくり、農作業、月一回の月例会など
「みんなでやる」機会がいろいろと用意されています。
何故、みんなでやるかを大切にしているかということについて、塚越英弘社長は、
「普段の仕事は上下の関係、つまりタテのつながりで動くが、
みんなでやっている時はヨコのつながりで動くことになる。
上下とヨコだったら、どっちが話しやすいかといえば、ほとんどヨコでしょう」と言われ、
ヨコの関係の方が話しやすくなり、伝わりやすくなるので
信頼関係が圧倒的につくられると力説されていました。
信頼関係という最高の「関係の質」を築く「みんなでやる」行事が
次から次へと用意されていて、
多くの社員同士がヨコでつながる時間と環境があることが、
あの伊那食品工業のえも言われぬ空気感を醸し出す企業風土を創り出す根底にあるという訳です。
これは徹底的にパクるべき経営手法と言わざるを得ません。
会議のあり方
塚越社長は会議のあり方についても重要な示唆を与えてくれています。
曰く「会議は、皆がわざわざ集まる場所、
それなのに数字のことで時間使うことはもったいない。
そうではなく、せっかく集まったのだから、
これから何をするのか、何をどうやっていくか、どう展開していくか、
この対話をしてこそ、意義がある」と語られていました。
伊那食品工業で、この言葉が使われているかどうかは知りえませんが、
塚越社長がおっしゃっている会議の意味合いは、予定調和型の従来会議ではなく、
発散して可能性を高めていくオフサイトミーティングそのものなのだろうと
直感的に感じられました。
それは、この後の発言で確信に変わっていきました。
「仕事とは価値を生んでこそ仕事といえる。それが一番大事なこと。
では価値とは何か。それはファンづくりである。
いかにお客さんが自分たちを好きになってもらえるか、
ずっと続けて商品を購入してくれるファンにどうやったらなってくれるか、
これを考える、そういう仕事をしよう、そのための会議だ」
社内会議のスタイルをオフサイトミーティングにしていくことも重要な実務です。
(以下、次号)
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