第987号 幸せを実現する実務 ~ 実践編4.介護と仕事の両立支援が鍵
2023.5.8
幸せを実現する実務 ~ 実践編4.介護と仕事の両立支援が鍵
前号よりつづく
引き続き幸せを実現する実務論を展開します。
(3)支援型リーダーシップの醸成
1.ボスマネジメントの風習は一掃し、現場に支援型リーダーを配置していくこと
981号で指摘したとおり、ボスマネ、パワハラを一掃するのは経営者にしかできない仕事です。そうした人物が社内にいる場合には、人本経営実践の大きな妨げになります。
不退転で問題解決へ向き合ってください。
どうしても相手が変われない場合には、
苦渋の選択となりますが退職勧奨も現実的な選択肢の一つとなります。
ただし、これ以上ない好条件で円満に雇用契約を終了していくことを心がけてください。
2.支援型リーダーシップを全社員が身につけられるように風土改革をはかること
支援型リーダーシップについては過去の通信でも取り上げています。
763号「支援型リーダーシップの発揮のために」
968号「支援型リーダーの役割は、「メンバーの生活に気を配ること」を
ぜひ参考にしてください。
3.仕事の都合より家庭の事情を優先していいことを宣言し、育児や介護と仕事を両立させること
この視点は福利厚生とか働きやすい職場づくりという観点から語られることが多いですが、
それが本旨ではなく、企業の組織内に、
お互い様、おかげ様の企業文化を育んでいくことがその目的に他なりません。
団塊の世代が後期高齢者層(75歳)に突入しました。
これから社員の家族に介護が発生する確率がものすごい勢いで高まります。
その時に、このお互い様、おかげ様の組織風土があるのか、ないのかでは雲泥の差になります。
子育て社員を支援する育児休業制度は、ようやく多くの企業で整ってきました。
アラサーの社員が対象でした。
概ね1年という先が見通せることで企業も対応はし易かったでしょう。
ところが介護は状況が全く違ってきます。
まず対象者は団塊の世代の子である40代50代の社員に発生してきます。
ベテラン社員や管理職が、どの会社でも多いことでしょう。
その社員の老いた母親や父親が、
例えば、道で転んで足を骨折し要介護状態になったという出来事が発生するのです。
育児と違い、どれくらいの期間が介護に必要になるのか、先行きは見通せません。
もし御社の部長の母親が介護状態になった時、
御社ではどのようなことになると想定できますか?
幸せ軸の人本経営が貫かれた組織ならば、次のようになることでしょう。
親が介護状態になったにきも関わらず、
翌日、部長は出社して執務にあたろうとしています。
するとお互い様、おかげ様の組織風土となっていると、
部下たちはいっせいにこう言うことでしょう。
「部長、何しに会社に来たのですか?お母さまが大変なのでしょう。
今日は会社なんか来ないで、お母さまの傍にいてください。
いろいろしてあげることがあるでしょう。
仕事は自分たちだけできちっとこなしますから。
これまでみんな部長にはお世話になりました。
今、家庭の事情を優先するのは部長の番です」
こうして部長は家に追い返されることでしょう。
そして、部長も思い直し、「それではかたじけないが休暇をもらう」といって
家に戻ることでしょう。
これがお互い様、おかげ様の文化です。
介護休暇はその本人が介護をするための休暇ではなく、
必要なケアができる体制を整える期間です。
役所での手続きやケアマネージャーとの折衝、
必要によっては介護施設の調査や申込など、
想像以上に家族がしなければならないことが出てきます。
それを集中的にこなすための休暇を心置きなく取ってもらい、
何とか落ち着いた状況で復職してもらうことが、
介護と仕事の両立支援が実現した姿です。
家族に介護が発生し離職を余儀なくされるケースは少なくありません。
それがベテランや管理職に出ては企業の活力に影響が及ぶのは必至でしょう。
介護が必要になってしまった社員が発生した時に、
ぜひとも上記のような態度をとることができる組織風土、企業文化を育てていきましょう。
(以下、次号)
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