第954号 人的資本情報開示の鉄則
2022.8.29
人的資本情報開示の鉄則
政府が、8月上旬には人的資本可視化の指針の公表をするとしていましたが、遅れているようです。
しかし、世の中の人的資本経営に関する関心度は高まるばかりです。最近の動きです。
〇先行する形で厚労省が、男女賃金格差の公表を義務化する法律改正を実施
「常用労働者301人以上の大企業には、次の事業年度の開始日からおおむね3か月以内に、
直近の男女の賃金の差異の実績を公表することが義務付けられる。
「男女の賃金の差異」は、全労働者、正社員、パート・ 有期社員の区分ごとに
男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示す」
これは、多くの大企業では戦々恐々としていることでしょう。
マイナビが発表した「ライフキャリア実態調査2022年版(働き方・キャリア編)」 によると、
就業者の主な仕事での収入は、男性平均560万7,000円、 女性平均364万円で、
男女の賃金格差は約200万円となっており、
企業規模別にみると301名以上の企業で220.7万円となり
賃金差が最も大きかったと報じられているからです。
人本経営の多くの企業が男女賃金格差をなくす実践をしているのと大違いです。
今後、人的資本の情報開示で、
こうした人を大切にする思想の差がつまびらかにされてくる訳です。
「今後は、人を大切にする経営への改革を推進していく必要があります。
そのために、”実践”と”開示”の両輪で進めていくことが重要であり、
変化を加速させる「場」の創設等に取り組む」
遂にここまで、行政が踏み込むようになってきたかと感じます。
問題は、それをどう具現化していくかでしょう。
この流れを受け、先週発起されたのが人的資本経営コンソーシアムです。
〇「人的資本経営コンソーシアム」が発足 大企業など320法人が参加
「人材を資本と捉え、中長期的な企業価値の向上につなげる「人的資本経営」を
日本企業に根付かせる方策について産官学で話し合う「人的資本経営コンソーシアム」が
25日、東京都内で設立総会を開いて発足した。
大企業を中心に全国から320の法人が参加した」
株式会社シェアードバリュー・コーポレーションも、その1社として参加しました。
日本を代表するそうそうたる企業が参加リストにありました。
五十音順で弊社は、サントリーの次にありました(笑)。
今後、実践と開示の分科会がもたれ、
上記の未来人材ビジョンの具現化を推進させていくことになるようです。
人的資本経営に関する調査によると、
「9割が人的資本開示の必要性を感じていても、既に上場企業の6割以上が、
「人的資本開示」への取り組みを実施している」ということです。
人的資本経営に関する関心が、企業間で急速に高まってきており、
経営人事マネジメントにおいては、人的資本経営が潮流となってきたことは
疑いようがありません。
人的資本経営は依然として「業績軸」である
人的資本経営は、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、
中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方と経産省で定義を説明しています。
四半期ごとに業績の情報開示を迫ってきた短期業績志向主義、
近視眼的経営が特色であった「業績軸」経営を是正していくべきという主張です。
長期に持続可能性を高めていくために、何をしていけばいいかということになると、
それを実現している人を大切にする人本経営企業が実践しているエンゲージメント強化、
支援型リーダーの育成などといった経営手法に近い内容が出てくることは、
当然といえば、当然です。
前進はしてきていることは確かでしょう。
しかし、これまでの人的資本経営の議論をみてきて、感じたことがあります。
それは、人的資本経営は、依然として「業績軸」経営の範疇にあるということです。
つまり長期の業績志向主義であるということです。
目的が業績拡大のためなのか、関わるステークホルダーの幸福増大のためなのかでは、
その結果は雲泥の差になることは明白です。
人本経営を実践し結果が伴っている企業では、
求められているそれぞれの人的資本の情報について、
確実に世間の目を見張る開示が出来ます。
「幸せ軸」の人本経営を実践したうえで人的資本の情報を開示していくこと、
これが真に求められる人的資本経営に向き合う基本スタンス、鉄則であると
ぜひ認識を深めてほしいのです。
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