第942号 警告 無価値な「人的資本」開示をしてはいけない

第942号 警告 無価値な「人的資本」開示をしてはいけない

警告 無価値な「人的資本」開示をしてはいけない

日経新聞が一面でぶち抜き、
企業が人的資本経営を実践しているかということが問われる時代になってきたと報じ、
政府は、2023年度にも人的資本の一部を有価証券報告書に記載することを義務付けるといいます。

政財界が、人的資本経営に色めき立っているので、千載一遇のビジネスチャンスとばかり、
シンクタンク、コンサルファームが人的資本経営に関する情報提供を
競って行うようになってきました。

人的資本経営で企業価値が高まる?

その主張は、「人的資本経営を実践することで、企業価値が向上しますよ」
という触れ込みです。

この言説が当たり前のように流布されていますが、本当なのでしょうか?
たしかに、前号で紹介した日本初のISO30414認証を取得した企業は、
株価が跳ね上がりました。

ファイナンス的には企業価値の向上に成功したと評価されるのでしょう。
しかし、開示情報を検討すると、この上場企業は障がい者法定雇用率2.3%を
直近3年間一度も達成していないのです。
はるかに届かない低レベルです。

人本経営的に言わせていただければ、
価値ある企業経営の取り組みをしているとは、まったく評価できません。
むしろ、恥ずかしくないのだろうかと思ってしまいます。

障害があろうと、なかろうと、人がこの世に生まれた以上、
幸せになるために生きていくことが当然の権利です。

働くことによって、
「人に愛されること 人に褒められること 人の役に立つこと、人から必要とされること」という
人間にとっての究極の幸せは得られると説いたのは
日本理化学工業の故大山泰弘さんでした。

愛されること以外の3つの幸せは
仕事を通じて得ることが出来る幸せであるという指摘は、
本当にその通りだと実感させられます。

だからこそ日本国憲法に、すべての国民に勤労の権利と義務が課せられているのです。

そして、せめて企業には、全労働者の2.3%は障害のある方を雇用してほしいと
法律が整備されている訳です。

直接雇用しなくとも特例子会社という別会社をつくって、
そこで障がい者を雇うことでも法定クリアは認めるという抜け道まで用意されています。
それすらも実施できずにいるのです。

障がい者雇用は、ダイバーシティの1丁目1番地のはずです。
そのために、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞は、
5年以上障がい者法定雇用率を満たしていないと申請すらできないのです。

障がい者雇用だけでなく、高齢者雇用でも定年手前で大量の希望退職者を募っているくせに、
これからは人的資本経営だと流行りに乗じている会社も散見されます。

見えてきたことがあります。
それは、人本経営(人を大切にする経営)を実践したうえで、
「人的資本」情報を開示しなければ無価値であるということです。
このことを声を大にしていきたい。そう決めました。

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