第938号 墓穴を掘った大企業よ、今こそ伊那食品工業に学べ
2022.4.25
墓穴を掘った大企業よ、今こそ伊那食品工業に学べ
人的資本経営について企業動向調査の結果が報じられていました。
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・63%が「人的資本経営に向け、実施あるいは準備している」と回答。
人的資本情報の開示などの動きをすでに進めている企業のうち、94%は上場企業
・7割以上の企業が、「リソース不足以外のところに課題がある」ため、
人的資本情報の開示に向け動けていない
・人的資本情報について、94%が情報を測定、取りまとめ、社内外への開示を進めている
・人的資本情報の開示に向け、76%が「情報集約や開示範囲、経営層との合意形成において
課題を感じている」と回答
・人的資本情報の開示において、人事が今後取り組みたいことは
「従業員データの可視化」「情報整理や人材戦略の見直し」
・7割以上の企業が、「人的資本情報の開示をサポートするサービスに対し興味がある」と回答
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去年から、人的資本経営という言葉が登場し、
瞬く間に大企業を中心に関心が高まっていることがうかがえます。
932号で紹介しましたが、日本の資本金10億円以上の企業は、
この約20年間で売上が107%しか成長していません。
ですが、経常利益は319%を上げ297%増の内部留保確保に成功しています。
そして役員報酬は132%伸びていますが、平均従業員給与、設備投資とも、
驚くべきことに96%とその割合が減じています。
内部留保を蓄えていくことは、全く否定するところではありませんが、
あまりにいびつな状態にあると言わざるを得ません。
これでは屈辱的に韓国に給与水準が抜かれたということも理解できるというものです。
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韓国に抜かれた日本の平均賃金 上がらぬ理由は生産性かそれとも…
日本の平均賃金は424万円。
35カ国中22位で、1位の米国(763万円)と339万円も差がある。
1990年と比べると、日本が18万円しか増えていない間に、米国は247万円も増えていた。
この間、韓国は1・9倍に急上昇。日本は15年に抜かれ、いまは38万円差だ。
日本が足踏みしている間に、世界との差はどんどん開いていた。
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給与という人的資本や設備投資という持続可能性に
極めて重要な「有効供給」を生み出すことになる未来投資をしてこなかった日本の大企業は
恥を知るべきであると言わざるを得ません。
本来そこへつぎ込むべき原資は、
なんとことごとく配当金、すなわち株主へとせっせと還元されているのです。
その伸長度は620%と信じがたい水準です。
道を間違えた日本大企業
機関投資家が人的資本経営に投資している企業を重視するとしてきたことは、
925号などで考察した通りです。
つまり、いかにお金を投資家に回していても、
今後は、そこで評価するのでなく、
人的資本にどれだけ投資しているかで投資先を選択すると宣言したわけですから、
上場企業を中心とする大企業は、まさしく今、青天の霹靂状態になっているという訳です。
大企業は、真摯に年輪経営で、
増収増益、増員、増報酬を実現している伊那食品工業を始めとする
人本経営実践企業に学ぶべき時です。
これでもなお、目覚めず、目先の利益を追い求め
投資家の目の色だけを気にしていくのなら、もう退場したほうがよいでしょう。
大丈夫です。
あとは、上場に目もくれず人を大切にする経営を実現している企業が主役になって、
社会を健全にしていきますから。
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