第921号 人本主義の人事考課制度構築論
2021.12.13
人本主義の人事考課制度構築論
人を大切にする経営を推進させていくために、
年功主義、成果主義、能力主義に代わる
人本主義による人事考課制度の構築を弊社では提唱していくことにいたしました。
以下、各イズムによる制度の特色を比較表にしてみます。
人事考課制度比較表
重視能力 評価の重点 考課者 タイプ 目的 存続要件 リスク
年功主義 経験値 勤続年数 上司 相対評価 序列(調整) 右肩上がり 人件費高騰
成果主義 技術力 結果 経営者 相対評価 査定 定着率 不平不満増大
能力主義 仕事力 スキル・知識 上司 相対評価 管理 納得性 人事権の強大化
人本主義 人間力 関係の質 多面 絶対評価 教育 信頼性 仲良しクラブ化
■年功主義が今も機能している会社がある
かつて日本の企業では、三種の神器といわれていた年功主義は、
年齢、勤続年数による序列付けをはかり、いわば調整機能となっていました。
長期雇用には適している仕組みであったことは間違いありません。
しかし、存続のためには業績が右肩上がりであること必須条件となります。
わが国は生産年齢人口が極度に減少していく状態に陥り、
バブル経済崩壊後、7割近い企業が赤字となってしまいました。
伊那食品工業のような健全経営を実現できている優良企業では、
未だに年功主義を採用している事例も多く、
維持できるならば、制度として否定されるものではないと考えています。
世の中の企業の多くが、赤字基調となり
年功主義を維持するための人件費を確保できなくなるにつれて
成果主義型の評価制度の導入が試行されていきました。
結果としての成果にフォーカスした評価がクローズアップされていくと、
その成果達成に協力したであろうチームや他者への配慮が欠け、
不平不満の温床になることは容易に考えられるところです。
面白くないと離職者が続出するようであれば存続は難しいと言わざるをえません。
■能力主義が成立する条件
仕事の業績だけでなく、プロセスに対しても評価の視点を広げていこうということで
能力主義の人事制度がわが国では導入されていきました。
楠田式に代表される職能資格制度、弥冨式に代表される等級制度は
一定程度の企業で定着をしているのが現状ではないかと考えられます。
人を大切にする人本経営を展開している企業でも、
こうした能力主義の人事制度を導入して機能している事例があります。
従って、理論、仕組みとしてはありなのだと認識しています。
しかし、人を大切にする企業風土が醸成されていない職場では、
能力主義の制度の運用に行き詰まり、失敗しているケースが少なくありません。
何が明暗分けているかと言えば明らかで、組織に対する信頼感の度合いの差に尽きます。
とくに評価者に対して信頼がないと、評価制度がうまくいく訳はないことは自明です。
人が人を評価するのですから、「正しい」かどうかは永遠に結論は出ません。
よって大事なことは、「納得できる」ということなのです。
■人本主義の人事評価制度を開花させる
であるならば、納得感の高い評価制度を育てられるような企業風土をよくしていくことができれば、
人を大切にする経営を前進させる仕組み化ができるはずです。
このことに着目したのが、人本主義の人事考課制度です。
周りの社員から信頼されている人物でなければ、考課者になることができない昇格制度をまず整えます。
その信頼度を評価する能力として「人間力」という軸を制度の柱に据えます。
したがって、言うまでもありませんが、この「人間力」をどう定義して、
何をもって評価していくかということに対する納得感がなければ
人本主義の制度は機能しないということになります。
「人間力」とは何かについて、次号では、紐解いていくことにいたします。(つづく)
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