第919号 人を大切にする経営を指南できない士業は、その価値を失う
2021.11.29
人を大切にする経営を指南できない士業は、その価値を失う
「これから士業は、人を大切にする経営を指南できない者は、その存在価値を失う」
こう恩師である坂本光司先生は、社労士や税理士などに対して警鐘を鳴らしておられました。
■大きくトレンドは変化した
今、社会をとりまく大きな流れは、人を大切にする価値軸へ大きく振れだしていることは確実です。
例えば、915号で紹介したとおり、
政府の審議会で東大の教授までが「⼈」を⼤切にする資本主義の構築を提唱しています。
2000年あたりをピークに、生産年齢人口は急速に減少し、
およそ1200万人という東京都の人口に相当する15歳から64歳の人が、わが国から消失しています。
この層は労働者であり、主たる消費者層ですから、経済活動全体に影響が及ばない訳がありません。
コロナ禍以前は、あらゆる業種で人手不足が深刻化する事態を招いていました。
推計では、あと40年近く減少し続け、さらに2500万人くらいいなくなると見込まれています。
戦後の50年間は、逆にこの層が増え続けていたため、右肩上がりの経済環境にありました。
戦後復興の高度成長が実現できた理由の一つです。
バブル経済があの時期に、はじけたのは偶然ではなく、
この生産年齢人口の動態を踏まえると必然だったといえるのです。
しかし、「失われた10年」などといわれ、あっという間に30年が経過しようとしています。
失われたのではなく、前提条件が根本的に変わったのです。
私たちは、これから右肩下がりの経済環境下で、
ゴーイングコンサーンを考えねばなりません。
失った生産年齢人口の補填として、外国人に頼ろうとする方針や政策が、
このところ矢継ぎ早に取り立てられていますが、それも断じて正解ではありません。
文化の問題ですから、異質な他民族を移民させれば、すでに欧州でも問題になっているように、
様々な弊害が社会のいたるところで噴出するのは明らかで、
日本が日本らしからぬ世界になってしまうことは必至です。
働き方改革で、残業を削減したときの状況にある意味、似ています。
長時間労働を前提とした企業経営のあり方を残業なしで、
どのようにして事業継続を成し遂げていくかという問題解決をしなければ本質にたどり着けません。
健全なダウンサイズが必要なのです。
人口が今の半分の6000万人になったとしても、
健康な国づくりを目指すという視点がなければ、
本質的な問題解決はなしえないのではないかと考えます。
人口が減少したとしても、
年輪経営で確実な安定成長を持続的に継続していく会社が、わが国に存在し続けていく限り、
かつてのような高度成長はなくとも、
わが国は、これからも豊かで平和な社会を末永く築けるはずです。
■すべての企業が人本経営を実践すべき時代
一灯照隅を経営理念に、事業体としては小さくとも、盤石な経営体質を築き、
永続の道を歩み続けている昭和測器のような会社だらけになったら、
万灯照国となって、わが国は健全に発展成長し続け、国民は幸せになれることでしょう。
本当に真剣に、行く末のことを考えると、
そのあり方以外にわが国の存続はありえないのではないかという思いが強くなります。
当通信でも何度か取り上げた改正パワハラ防止法が、2022年4月から中小企業にも適用されてきます。
もはや指導であっても、人を大切にしない行為はパワハラとみなされるように確実になってきます。
この法改正は、パワハラ根絶のためには対症療法ではどうしようもない、
人を大切にする組織風土の醸成や企業文化を形成しないとどうにもならないと、
まともな経営者なら気づかせてくれる好機になると、最近、感じ始めています。
そのときに、人を大切にする具体的実践法として、人本経営のノウハウが必ず役に立ちます。
その自信が大いにあります。
来年は、本当に士業が、とくに人の専門家である社労士が、
力を発揮すべき時であると気持ちを奮い立たせております。
今こそ冒頭の恩師の言葉を改めて想起し行動をして参ります。
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