第917号 掃除の意味&信頼関係の築き方~伊那食品工業視察記2021 その3
2021.11.15
掃除の意味&信頼関係の築き方~伊那食品工業視察記2021 その3
掃除の意味 なぜルールが決まっていないか
毎朝、伊那食品工業の社員は全員で、誰に言われることもなく、
自発的に広大な敷地の隅々まで掃除をしていることで有名です。
これまで、そうすることで一日が始まると自分も周りも快適にスタートがきれて、
塚越寛顧問曰く忘己利他の精神が発揮されるからだと理解していました。
今回、さらに深い意味があることに気づかされました。
朝掃除は、誰がどこを清掃するか決まっていないということは以前から知っていました。
今回、なぜ決まっていないのかという理由が分かったのです。
ルールが決まっていないと、毎日毎日、自分がどこを掃除しようか、したらいいか、
ということを考えなければなりません。
そして考えていると、自分がしたほうがいいとか、こうしようと気づくことになると
塚越英弘社長はおっしゃっていました。
人は気づくことで成長するので気づきはとても大事です。
けれども、気づくことは簡単ではありません。
だから、毎日の掃除は「気づきの訓練」だと社員には、そう目的を伝えているということでした。
「掃除は、ただ奇麗にするためでなく、自分の成長のためにやっているのです。
その実感をもてるので、社員たちは言われたからではなく、いいことだから続けられるのです」
なるほどと声を上げてしまいました。
信頼関係を築く
盤石な体制に映る伊那食品工業ですが、
あるべき姿を共有していくために、思いを伝えていくことは、
やはり一番むずかしいと塚越社長は語られていました。
伝えるために「皆でやる」ことを大切にしているということです。
たしかに、朝の掃除も、有名な社員旅行も、かんてんぱぱ祭りも、全社員総出で実施されています。
上下の関係である労使ではなく、同志の関係ということは伊那食品工業の特長の一つですが、
ヨコのつながりである同志のほうが伝わるということです。
伝えるために、いちばん重要なことは信頼関係であって、
信頼がないと、いくら正しいことを云っても伝わりません。
信頼がないとまず素直に、その人の言うことを聞けず、相手を責めるようになってしまいます。
どうやったら信頼されるのか、ということについて、以下、塚越社長のお話です。
「ウソつきは信頼されない。これは当然のことと皆思うけれど、
気づかないうちにウソの行動をしていないか。
本音と建前・・・建前はウソということ。
理念経営で立派な方針をたて、行動指針として価値基準を示したとしても、
それに伴った行動をしていないと建前になってウソの行動になるのです。
たとえば「お客様最優先」なんて掲げて、本当にそんな行動、
つまり他人を最優先にできる行動を常にとれるのか?
そんな人はめったにいない。言葉が足りない。
自分がうれしいからお客様を喜ばせる。こうならウソでなくなる」
これまた、なるほど!と唸りました。
言っていることとやっていることを一致させることに、
とにかく心血を注いでおられるのだろうということが
とても伝わってきました。
そのことが信頼関係を深くしていく術、技なのだと学ばされました。
今後、クレド作成などの価値基準づくりの場面では、必ず、このお話をお伝えして、
言葉に命が宿るように指導していきたいと心に決めました。
いつ視察しても、たくさんの学びがあります。さすがレジェンドだと頭が下がりました。(了)
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