第915号 人本主義社会実現進むか~第1回「新しい資本主義実現会議」開催
2021.11.1
人本主義社会実現進むか~第1回「新しい資本主義実現会議」開催
岸田新首相肝いりの、第1回「新しい資本主義実現会議」が26日開催されました。
議事は、「我が国の新しい資本主義のビジョンとその具体化について」とされ、
同会議は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとする
新しい資本主義のビジョンの提示等を目的として設立されました。
我が国が目指していく新しい資本主義の姿は如何にあるべきかを問い、
政策に反映させていく意向とみられています。
会議では、論点整理のため、
新しい資本主義(ステークホルダー論) を巡る識者の議論の整理
という資料が提出されています。
ここで、3人の識者の論説を引き合いにしています。
1.ジャン・ティロル ノーベル経済学賞
・ステークホルダー全体を考慮した企業統治を考える必要性を提唱
・企業統治とは、株主が経営者をどう監視するかのみの問題ではない。
株主、従業員、顧客、取引事業者なども含めたすべてのステークホルダー(利害関係者)の統御の問題
2.ラジャン とジンガルス
・⼈的資産が価値の源泉となってきたことから、企業のあり⽅が変化
・「⾦」の軸から「⼈」の軸への企業統治の重点の移⾏を主張
3.レベッカ・ヘンダーソン ハーバード教授
・気候変動や格差といった問題に対しては、「株主価値の最⼤化」という考え⽅を離れ、
資本主義の再構築を⾏うことが必要と主張
○レベッカが指摘する、企業経営者が取り組むべき5つのステップ
①共有価値の創造…社会問題の解決と経済的利益を同時に⽬指す
②⽬的・存在意義(パーパス)主導型の組織の構築
③⾦融の回路の⾒直し…ESG重視等⻑期志向の投資家を確保する
④協⼒体制をつくる
⑤社会の仕組みを作り変え、政府を⽴て直す
第1回会議に選出された有識者は、以下の15名の方でした。
・日本経済団体連合会会長
・シブサワ・アンド・カンパニー株式会社社長
・株式会社シナモン代表取締役社長CEO AI関連
・株式会社経営共創基盤グループ会長 事業再生コンサル
・日本商工会議所会頭
・東京大学大学院経済学研究科教授
・日本労働組合総連合会会長
・株式会社日本総合研究所理事長
・Zホールディングス株式会社社長 ヤフー
・経済同友会代表幹事
・塩野義製薬株式会社取締役副社長 大企業代表?
・ダイヤ精機株式会社社長 中小企業代表?
・東京大学大学院工学系研究科教授
・MPower Partners GP, Limited. ゼネラル・パートナー ESG投資
・READYFOR 株式会社社長 クラウドファンディング
このうち以下の7名は第1回会議で意見を提出しています。要約するとは以下のとおりです。
・「論語と算盤」 シブサワ アンド カンパニー代表
・「株主資本主義の是正」 経団連会長
・「成⻑の定義を、Inclusive Wealth(経済資本+⼈的資本+⾃然資本)としてはいかがか」 シナモン代表
・「⼤企業と中⼩企業の新たな共存共栄関係の構築」 商工会議所会頭
・「「⼈」を⼤切にする資本主義の構築」 東京大学大学院経済学研究科教授
・「働くことを軸とする安心社会」 連合会長
・「地域密着の中堅・中小企業の経営イノベーション、ローカルDXが鍵」 経営共創基盤グループ会長
進むか人本主義社会の構築
業績軸から幸せ軸への流れをつくろうとしている意図が明確に感じられます。
経営学の学者代表としては、人を大切にする経営学会の坂本光司会長を選んでほしかったところですが、
東大の経済学者が、⼈を⼤切にする資本主義の構築を主張したことは、誠に感慨深いものがあります。
とうとう時代がここまで来たかと万感の思いを感じます。
渋沢栄一の子孫の方が、「成長」から「分配」、「分配」が更なる「成長」へつながる好循環のために、
財政に依存するフローだけでなく、持続可能なストック(本「もと」)づくり、
新しい時代の価値創造・好循環に不可欠なストックは「人」と提言していまます。
明確に人本主義といっています。それが新しい資本主義の要諦となるならば、大歓迎です。
ただやはり、有識者の中には、投資から頭が離れていないメンバーも少なくなく、
どう政策に結びつけていくか、これが難題でしょう。
安倍政権で「働き方改革」がムーブメントになったように、
人本経営を志す経営者が増えるような、政策が織りなされてくることをぜひ期待したいところです。
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