第893号 人本経営におけるパートナーシップのあり方
2021.5.24
人本経営におけるパートナーシップのあり方
なんだか物騒な見出しの記事がUPされていました。
スマートシティ構想で連携をしているトヨタとパナソニックの関係が
暗礁に乗り始めているらしいということを伝えています。
記事は有料なので先に進めず、全体を把握している訳ではありません。
気になって、いろいろと検索してみましたが、
類似の記事はとりあえずキャッチできませんでしたので、真偽のほどは定かではありません。
ただ事業活動において、有効なパートナーシップはどうあるべきなのか、
ということについて考えるよいきっかけだと感じました。
人本経営においては、顧客の前に取引先、仕入先、提携先といった
協力会社との関係の質を良好にしていくことを重視していきます。
自社の社員と協力会社の社員がモチベーション高く生産活動をしてくれることで、
魅力的なアウトプットとしての商品やサービスが誕生し、
それにお客様が触れ、満足や感動が生まれると考えるからにほかなりません。
■大手製造業はなぜ衰退したか
高度成長を支えていたかつての大手製造業の凋落は、
日本では珍しくなくなっています。
自社の傘下として多くの中小企業を束ねてピラミッド構造を形成し
スケールメリットをはかるビジネスモデルは、
右肩下がりの経済トレンドに入ったことと
低賃金をベースにした後進国の躍進によって、
みるみる崩れていきました。
既存商品が価格競争に敗れ、収益性が圧迫されていき、事業が衰退していったというのが、
一つの典型的パターンです。
なぜ衰退を防げなかったのでしょうか。
そうした外部環境の要因もさることながら、
協力会社に対する冷遇が本体である自社の体力も急速に奪っていったのではないかと、
今、冷静にふりかえることができます。
「下請け」と呼んでいる段階で、今日の停滞を招くことは必至だったのではないでしょうか。
本体の収益性が悪くなると、途端に関係先を冷遇し始めます。
「下請けイジメ」という言葉が存在しているくらいですから、
常態として行われていたということでしょう。
本来であれば、価格競争に巻き込まれない新商品の開発を澱みなく社会に提供していくことでこそ
付加価値は高まっていきます。
そのためには、協力会社とのよりよい「関係の質」は欠くことができない経営課題であったはずですが、
目先の利益に目を奪われ、バサバサ関係を切っていったのですから、
ジリ貧になるのは火を見るより明らかだったわけです。
他山の石として、教訓にしていくことでしょう。
いいパートナーシップとはどうあるべきなのでしょうか。
■良好なパートナーシップを考える
○ 上下の関係でない
○ 思惑、打算先行、自己の満足の優先では長続きしない
○ 心から共感共鳴できている
○ 三方良し的な目的性に優れていること
○ 関わることで、新しい付加価値を生み出し続けられること
学びを踏まえるならば、まず上下の関係ではなく、
互いの長所、強みを活かしあえる掛け算の関係になることが必要でしょう。
一方が一方に与え続け、その代償が与えられるような役務型では
真のパートナー関係を形成することは、
この変化の時代にあって継続性という点からも難しいと感じられます。
また、この記事でも触れられていますが、
打算、すなわち自社のメリットばかりではとん挫必至です。
むしろ提携したことで、相手が儲かることが心から嬉しいと思えるなら
パートナーになるというレベル感が求められてくるのではないかという気がいたします。
そして細かな契約ありきではなく、心で共感共鳴できるからこそスタートするのであり、
その後も、絆感でつながっていくという意思も確認しておきたいところです。
さらに、おそらく、これが最も重要だと思いますが、
目的すなわち何のためにパートナーになるか完璧に一致していることを確認しておきたいものです。
その目的は、金銭ではなく、関わることで、
社会をよりよくする新しい付加価値を生み出し続けられることが実感できるものであれば
良好な関係は長く続くことでしょう。
このような点が人本経営におけるパートナーシップのあり方と考えられます。
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