第868号 紐づけを超えて~SDGsをどのように自社で展開するか SVC編
2020.11.16
紐づけを超えて~SDGsをどのように自社で展開するか SVC編
先週は、日本でいちばんSDGsに詳しい専門家、SDGパートナーズ有限会社のCEO田瀬和夫さん、そして人本経営とSDGsを見事に実践している「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」受賞企業の株式会社北四国グラビア印刷のみなさまをお招きして『人本経営ベース SDGs実践セミナー』を開催させていただきました。SDGsを事業に紐づけするだけでは、本当のSDGsの実装とはいえないと指摘された田瀬さんの言葉がとても印象に残りました。紐づけから一歩踏み込む(経営戦略へ実装させる)ためには3つの新しい思考が必要だと提言されておられました。自社のケースに当てはめながら、学びを復習してみます。
■SDGsが「紐づけ」を越えて未来の経営のために与えてくれる3つの「思考」
①デザイン思考
一つ目の思考は、特定の問題解決でなく、その問題が発生しない理想の状態を定義することだといいます。
❖当社のケースで考える
当社では、労働紛争の解決ではなく、労働紛争が決して起きない健全な職場を増やすことを目指して、社労士の仕事の再定義を2009年に実施しました。そして、その具体的方策として「人本経営」という人を大切にする経営人事マネジメントのあり方を考案し、社会に提唱して参りました。デザイン思考の要点は、課題に対して対症療法的に対応するのではなく、論理的な解決施策を実施することで、根本原因の解消につながるイノベーションを生み出すということです。労働紛争の解決はまさしく対症療法です。そうではなく普段から社員を大切にし、モチベーション高く働いてもらうような企業文化をつくっていくことで紛争の発生はほぼ皆無となり、社員の意識はお客様に向かうため、顧客満足度の高い商品が生産され、結果として好業績につながっていくという善循環が発生し、持続性の高い企業経営が実現されていきます。実際この10年でそれ実現した企業は多く、この点についてはSDGs的なデザインは出来ていたかと改めて感じました。
②時間的逆算思考
デザイン思考により、イノベーションを起こすためには、「人間のありたい姿」から逆算していくことで、さらに演繹法的になるということでした。その事例として、米国のアポロ月面人類送致計画を示されていました。既存の延長線上にない壮大な目標を打ち立ていくことで、今、この時点ですべきことのレベル感が格段に変わってくるという訳です。これをバックキャスティングによるムーンショット理論というとのことでした。
❖当社のケースで考える
当社のクライアント先は、労働紛争とは無縁の会社ばかりになってきたという実感がありますが、日本全体で考えればその数はまだまだ少ないと感じます。人本経営はよいことだらけに決まっているのに、何故もっと普及しないのか、もっと普及させるにはどうしたらいいのか。今回もコロナ禍でたくさんのリストラが横行しています。その一方で、人が採用出来ないと課題にしている会社もたくさんあります。問題点を一企業内の課題解決でとらえるのでなく、例えば一定範囲の業界という社会単位まで思考単位を押し上げてムーンショットしていくことで新しいSDGs目標が出来るのではないかという気づきがありました。
③リンケージ思考(レバレッジ・ポイント理論)
SDGsを実装して経営していくことで利益が上がり、儲かれば儲かるほど社会がよくなっていくことがSDGsの成功の姿で、それを実現するための3つ目の思考として、自社のコア・コンピタンスでレバレッジ・ポイントを起点にして正の連鎖反応=SDGs ミノを引き起こすリンケージ思考が示されました。
❖当社のケースで考える
ここは、まさしく課題といえるところです。当社のコア・コンピタンスは明確に「人本経営実現のノウハウ」といえます。それを現在は、講座や研修という教育事業を中心に広めていますが、これだけでは「てこ」の力としてのレバレッジ・ポイントになっていないと、これも大いに気づかされました。リストラという働く人にとっての不安がない状態が実現し、人本経営が広まることで社会が目に見えてよくなり、結果として収益が持続的にもたらされるビジネス、それが当社のレバレッジ・ポイントといえるでしょう。そのビジネスやサービスの具体的な形とはどんなものであるのか。まさしく壮大な問いかけです。しかし、それが実現出来たら、必ず、確実に世の中はよくなるという確信がもてます。ブレイクスルー出来るかどうか。残りの職業人生の最期の命題が与えられたと受け止めて、思考の質を研ぎ澄ましていきます。
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