第823号 コロナ騒動下の未来工業ベンチマーク視察記
2020.3.2
コロナ騒動下の未来工業ベンチマーク視察記
憎きコロナウィルスのせいで計画・予定がめちゃくちゃになり、社会は大混乱の様相を呈してきました。イベント・行事は次々に中止や延期を余儀なくされています。幸い、当方で主催している講座や企画は少人数参加型ですので、参加してくれる方がいる限り、実施する方針でおります。
そんな訳で先週、いい会社ベンチマークツアー企画「壺中100年の会in岐阜・愛知・三重」を断行いたしました。人本経営を実践している会社は、空気感が素晴らしく、ウィルスごときが悪さをできる隙間がないと改めて感じた次第です。連日の落ち込む報道に触れ、また、仕事のキャンセルなどで気が滅入っていると、そこにウィルスは付け込んでくるのではないでしょうか。「病は気から」とはその通りでないでしょうか。こんな時こそ、いい会社のホンモノの空気に触れ、英気を養うことは極めて価値があることだと実感いたしました。定員25名の参加メンバーは、いろいろあったに違いありませんが、この時期に2日間のツアーに誰一人キャンセルされることなく参加してくださり、主催者として熱くこみ上げるものを感じました。参加された皆様は、「来てよかった」「パワーをもらえた」「明日からまた頑張る」と心にエネルギーをチャージしていただけたご様子で、やってよかったと心から思いました。
今回のツアーでは、なんといっても注目は未来工業さんでした。創業者の山田昭男さんがこの世を去り、名経営者であった瀧川克弘社長の後継として、創業者のご子息である山田雅裕様が社長となっての新体制では初めての視察の機会となったからです。
視察後に感じ、出てきた言葉は「安心した」でした。未来工業はメディアでも数多く取り上げられ、名うての超いい会社、超ホワイト企業として評判です。後継者として社長に就任されるにあたっては、さぞやご苦労があったことと推察しておりますが、この点についてこう山田社長は明言されていました。
「社員にとって天国のような会社、経営者にとって悪魔のような先代が創りあげた、この会社の色を自分は褪せないように守っていくこと、これに専心している。」
素晴らしいと感じました。普通、新任経営者は自分の色を出そうとしがちですが、完成度の高い未来工業では、そうではなく、後継者が微動だにせず受け継ぎ、守り続けていくという覚悟でおられるのです。これなら同社は、これから先も高い持続可能性を維持していくだろうと安心したのです。
印象に残った「あり方」を挙げておきます。
〇報連相は会社が社員に対するキャンペーン
上司がメンバーに報連相をよくすることを求めていくことは、強制性が生じ、やらされ感になるので未来工業は報連相禁止。同社でも、もちろん報告、連絡、相談は日常的に行われているが、それらがセットでルール化されている訳ではないと強調されていました。ルールとなると、上司は受けに回り、現場に行く行為が鈍り、大事な皮膚感覚がなくなり、楽なほうへ流されていき、同社が大切にしている「常に考える」文化がほころびるという訳です。
〇管理職には命令権限が与えられていない
命令して相手に行動させることで時間短縮はできる。しかし、命令されることが好きな人間なんているはずはない。社員のやる気がすべてと考える同社では、命令でなく、いかに納得してモチベーション高く気持ちよく働けるか、これが出来ないのは管理職になれないと、きっぱりとおっしゃっていました。それを実践することは簡単ではないけれど、それが出来ているから社員は胸を張って未来工業の社員だと誇りをもてる、ということなのです。
〇年功序列はパーフェクトではないが成果主義よりいい
未来工業のすべての社員同士、仲がいい訳ではない。そりが合わないこともあり、人間が人間を査定すると不平不満は不可避。ならば年功序列でいこうと考えている。定年は70歳。60歳の給与のまま働くことが出来る。とにかく社員が喜んで目の色変えて働いてくれることを考えていくのです。
いい会社は、けっして楽な方向を選んでいるのでないことが伝わってくるベンチマークとなりました。
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