第816号 SDGsはブームか
2020.1.14
SDGsはブームか
『SDGsはブームなのか』
最近、このことが問いかけられる場面がありました。
即座に、「ブーム的な動きになっていることは確か、でもこの動きはホンモノ」と返答しました。
そのココロは、SDGsと人本経営は相性抜群だからです。
両者とも、いいね!といいながら、本気で関わり、本質的に変化しないと何もならないということも共通性があります。むしろ、気づいたのに何もしないと状態はさらに悪くなるといえるでしょうか。
本質的な変化とは、価値観を「満足」から「幸福」に変えることです。
昔、コンビニは朝7時から夜11時が営業時間でした。それでも当時としては画期的でしたが、経営者は味を占め、消費者はもっと至便をと要求し、欲という「満足」で一致して24時間365日が業界の常識となっていきました。
やがてひっ迫した人手不足の時代となり、過労死寸前とフランチャイズのオーナーは反旗を翻しました。恵方巻に代表される売り過ぎが引き起こす食品ロスも社会問題となってきています。SDGs的な感覚を意識した先進的な店舗において、24時間体制の見直しや、予約による注文販売に方針を転換したとニュースでは報じられています。そうした店舗では、当然、売上は減りましたが、利益にはむしろ好影響が及び、何より社会から支援や共感が多く届いているようです。
膨張する経営をしてパンクしては元も子もありません。とうとう、誰もが肌で感じているように、異常気象、気候変動の不気味さは世を覆うようになりました。このまま経済成長最優先で、自然が不自然になるような環境悪化を招いては、今を生きる者として子孫、将来に申し訳が立ちません。
■正しいか正しくないか、自然か不自然か
この二軸が大切で、人として正しく、自然に逆らわない生き方をしていくことこそが至福に至る、と教えてくださったのは、師匠坂本光司先生でした。もちろん、この自然は、自然現象の自然ではなく、身の丈で生きるといった態度の自然さを説いたものですが、SDGsへの意識が高まる現在においては、本当の自然を守るという意図でも、今こそ、痛切に意識したい心がけであると感じ入ります。
すなわち、「至便」ではなく「至福」を強く意識して行動することを励行していくのが現代人としてのあるべき姿なのではないでしょうか。少なくとも日本では、普通に努力していれば、衣食住足りて快適な生活を送れる物質面での豊かさが社会の隅々に行き渡っています。ここから先は、足るを知り、自分さえ、自分だけ、自社さえ、自社だけよければいいという偏狭な視野でなく、関わる家族、仲間、地域社会、取引先、顧客、そして世界のあらゆる人々との関係の質を高め、さらには自然に配慮した行動を中心軸にしていく生き方、あり方を実現していくステージになってきたのだと感じるのです。
人を大切にする経営=「人本経営」とは、まさしく、それを具現化していく企業経営のあり方です。そして、人本経営を極めて「いい会社」と多くの人々に称賛される企業で、「だれ一人取り残さないこと」を標榜するSDGsへの共感性が半端なく、すでにその実現度が高いことは、偶然ではなく必然なのです。
そうした「いい会社」では、今からことさらに構えてSDGsに取り組むというより、自社でやってきた取り組みそのものがSDGsの目標やターゲットをすでに達成している、という場合が少なくありません。そして、認識したのちは、さらにSDGsを経営課題として捉え、課題解決のために邁進しているという形です。ですから、人を大切にする「幸福」を増大させる人本経営が広まるとSDGsも同時に世界に広がるという正の連鎖が起きていくことになるのです。これが冒頭の「ブームでなくホンモノ」の根拠です。
それでも、ああでもない、こうでもないともっともらしい御託を並べて、変わらずに「満足」を求める世界に執着する人や企業は存在し続けるでしょう。
「満足」vs「幸福」の衝突。これが避けられない時代の趨勢となってきました。今を生きる一人ひとりに問いかけられる命題です。どう生きていくか、それを決めるのは自分自身しかありません。
「幸福」派は、日々の生活で、自分の仕事を通じて、その答えを出していくことを繰り返していきます。日々の行動は些細なものかもしれませんが、そのパワーは決して弱いものではないでしょう。ネット社会になった今、その行動が共感というエネルギーになって時空を超えて広がっていくからです。
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