第807号 人本経営における人事制度のあり方4 自己申告制度・フィードバック
2019.11.5
人本経営における人事制度のあり方4 自己申告制度・フィードバック
引き続き、エンゲージメント項目に沿って、どのような人事制度を導入していけばよいのか、検討していくことにいたします。
11.この半年の間に、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
12.私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った
エンゲージメントを実現していくための人事制度についての考察も最終回となります。11と12はフィードバックの問題といえます。リーダーがメンバーの人事考課をしている会社は沢山あることでしょう。そして、多くの会社では半年ごとに考課結果を伝える面談を実施しているケースが多いのではないでしょうか。この時間を単なる評価結果の伝達の場面にしてしまっては、大変もったいないことです。この時期に、エンゲージメント状態がどうなっているかを確実に把握していく仕組みを、人事制度として仕組化していくことを提案します。
■エンゲージメント度合いを確認できるフィードバックを制度化する
具体的には、エンゲージメントの題目を活用した自己申告制度を導入することです。例えば、以下のようにエンゲージメントを裏返しにしたような問いをメンバーに投げかけて自己申告してもらうのです。
1. どのような期待に応えることを意識して仕事をしていますか
2. 仕事を正確に遂行するための機器や道具の現状についてどう感じていますか
3. 自分自身の強みはどんなことだと思っていますか
4. この1週間、仕事をしていて自分が役に立っているという実感がありますか
5. 職場で自分は尊重されているほうだと思いますか
6. 仕事上で、自分の成長を励ましてくれる人がいると感じますか
7. 職場では、適切な主張をして対話が促進出来ていると感じますか
8. 経営理念・ビジョン・経営方針には共感していますか、また、仕事の意味を考えていますか
9. 職場のだれかと切磋琢磨していますか
10. 仕事上で家族のような、友人のような親交のある人がいますか
自己申告制度を実施する目的は、社員が日々働いている中で、より働きがい、やりがいを見出していくために気づいていることの意見具申を促進させることにあります。上記の質問項目1~10は、エンゲージメント12の要素の1~10を裏返したものになります。
どういう角度から意見が出てきても、社員と会社の絆が出来上がっていくような質問であれば、いい対話になることでしょう。11と12については、この対話をしていけば必然と体感されることになるはずです。
『場の理論』を著し、心理学に多大な足跡を残したクルト・レヴィンは、「有効なフィードバックは、その人の成長のバロメーターである」との至言を残しています。そのポイントを以下のように指摘しています。
①「真に相手の役に立つ」という気持ちをもつこと
「私はあなたにこうあって欲しい」との願いをもった発言であること。
②具体的な観察データに基づいていること
主観的な意見ではなく、記述的(事実)であること。
③可変性の可能性があることへのフィードバック
④肯定的なことも否定的なことも、両方が必要である
⑤伝え方はマイメッセージであること
「私は~感じます」「私は~考えます」という伝え方が望ましい。「我々は」とか、「彼は~」「皆が~」という発言は遠まわしの無責任な発言で相手に真実味が伝わらない。
⑥叱るときは1対1ですぐその場で(Here and Now)誉めるときは全員の前で(過去のことでもOK)
いかがでしたでしょうか。ぜひ参考にして絆感のある職場づくりにお役立ていただければ幸いです。
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