第804号 人本経営における人事制度のあり方1 役割要件・機器類購入
2019.10.15
人本経営における人事制度のあり方1 役割要件・機器類購入
人本経営を形づくり、いい風土が出来上がってきた段階で、人事制度をどう整備していくかということは、テーマ性のある課題になってきます。とくに評価をどうしていくかということは高い関心ごとになってきます。
人本経営を実践していくための方法論については、これまでも語ってきた通り、100社あれば100通りです。しかし、そのやっていることは、このことを実現しようとしているという「あり方」は極めて似通ってきます。それは法則といっていい特徴として挙げられます。SVCでは、現在、34の基準があると指摘をしています。
それらの項目は、それを実現していくことで、人本経営の目的といえる職場や仕事上におけるステークホルダーとの関係の質を高め続けられていくことになるので、成功している人本経営実践企業がこぞって実現しているのだと分析しています。
関係の質は、絆の度合いによって左右されます。すなわちエンゲージメント度を高めていくことです。従って、その人事制度が、エンゲージメント度が高くなると確実に期待できるものでないと意味がありません。エンゲージメント度を高くしていくためには、評価制度だけでは不十分です。トータルな人事制度の中の一つの制度として、評価もとらえていくことが大切です。
では、エンゲージメント項目に沿って、どのような人事制度を導入していけばよいのか、検討していくことにいたします。ギャラップの調査の結果では、エンゲージメントは12の項目が挙げられています。順に検討していきましょう。
1.私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている
期待役割がわかっていることで、その期待に応えるために、成長をしていこうという動機が働き、どのように考え行動していくかという思考の質、行動の質につながっていきます。人事制度では、自社で求める人材像を就業年数や職種、職責などを考慮したキャリア形成の各ステージで要件定義して明らかにしていくことになります。
職能資格制度という一世風靡した人事制度がありましたが、杓子定規で血の通わない定義をしていれば、そこに共感が生まれるわけもなく、多くの会社で機能せずに終わったという苦い過去があります。
人本経営の実現のためには、支援型リーダーシップが絶対不可欠です。それを身に着けていくために新人から中堅、ベテランに至るまで、どのように人づくりをしていくか、自社の言葉でつくりこんでいくことです。「そうした人物になれば、仕事でも生活でも確実に幸せを実感できる」と、社員が共感共鳴できるような要件定義が出来るかどうかが鍵です。
経営陣や実行委員会が一方的につくりこんでいくのではなく、社内的にオープンにして、都度、社員からの意見を聞く機会を設けながら、全員でいい会社をつくっていくという意思を明確にして人材像づくりをしていくことで、人事制度にとって生命線といえる納得感を得ることが実現していくはずです。
2.私は自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている
絆感が高まっていくのは心の問題ととらえがちになりますが、ギャラップは膨大な調査の結果、2番目にこの項目をもってきました。設備や資源という言葉が直訳しすぎて硬いのですが、要は崇高な経営理念を掲げていても、実際に仕事をしようとする段階になって、「こんな年代物の器具で俺たちに仕事をしろというのか」「このパソコン、動きが遅すぎてどうしようもない」といったことを社員に感じさせているようであれば、まったく絆感は増さないと指摘しているのです。
これは鋭い指摘だと感じます。実際、自分だったら全く同感と思えてきます。弊社の指導先では、一切の稟議を必要とせず器具や備品や欲しいと思うものを社員が裁量で購入できるようにしている会社があります。これにより完全にこのエンゲージメント2が実現されています。
そこまではなかなかという場合には、大阪にある辰巳工業が実施している機器類個人購入制度はとても参考になります。社員一人ひとり予算をあてて、もっと仕事がしやすくなる、あるいはもっと数をそろえたいといった社員の願望を叶える制度を導入しています。詳細は、こちらをご覧いただきたいと存じますが、TTP(徹底的にパクる)したい人事制度だといえます。
今週号は、紙面の都合で2つしか検討できませんでしたが、次号以降も引き続き、このテーマでお伝えしていきます。人事制度づくりにもう迷わないように、役立つリードオフができるようにしていく所存です。ご期待ください。
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