第803号 本気でポスト資本主義社会を実現させよう

第803号 本気でポスト資本主義社会を実現させよう

本気でポスト資本主義社会を実現させよう

以前にお伝えしたとおり、米主要企業の経営者団体、ビジネス・ラウンドテーブルが、「株主第一主義」を見直し、従業員や地域社会などの利益を尊重した事業運営に取り組むと宣言しました。

その決断に影響を与えたといわれている仏経済学者ジャック・アタリの『2030年未来予測』。
同氏は、世界の人の「99%が激怒する」時代の到来を予測しています。富の極度の集中、環境負荷に歯止めをかけなければ、人々の怒りが爆発するという警告ですが、その流れを米国企業も無視できなくなり米経済界の今回の動きにつながりました。

グローバリゼーションの影響で「市場」と「民主主義」の関係が不安定になり、行き過ぎた経済至上主義の結果、市場での成功者に富が集中、格差が広がり、その不安定さが人々の心を不安にし、やがて怒りに発展、さらに憤まんへとエスカレートしていき2030年には立ち行かなくなるといいます。

市場で自由が追求されると、「自分さえ良ければいい」という利己主義的風潮がまん延してきますが、グローバルな市場はこれをコントロールするすべがありません。憤まんが「激怒」に変わり、それが支配する社会では、過激な宗教原理主義が跋扈(ばっこ)し、テロリズムが誘発されるという様相は、まさしく現在の世界の形容といえるようです。

トランプ大統領が登場して、いよいよその流れは決定的に加速されていきました。自国第一を掲げるアメリカファーストは、当初違和感がありましたが、随分慣れてきてしまったように感じます。

アタリ氏は、希望はあると指摘しています。利己主義の逆、「利他主義」の重要性だと強調しています。自分のためだけでなく、他者、そして次世代のために行動する流れをつくることだと指摘しています。利己主義が世界を滅ぼそうとしているのならば、逆に私たち一人ひとりが自らの内面を変革し、利他主義者を目指していこうということです。

■大きな時代の変化のうねりが現在起きている

大きく俯瞰していくことが大切なのではないかと感じます。今、ポスト資本主義社会の到来が訪れている時代だと認識していくことではないでしょうか。時代が大きく変わろうとしているときには、当然、守旧派の抵抗が起きてくることでしょう。変化が大きければ大きいほど、その抵抗も大きくなるに違いありません。

米国や中国の保護主義の強化、そして、連日ニュースで報じられている利己的な態度を取り続ける隣国の問題も、すべては大きな時代の転換期に起きている反動ではないかと感じるのです。

10年後、文字通りアタリが描く2030年には、流れが大きく変わっているのではないかという期待を抱いています。今回の米経済界の動きも、その流れの一環と考えればストンと理解ができます。

■符合するSDGs(エスディジーズ)への関心の高まり

国連が採択した“全世界全ての人たち”が“持続的”に“人らしく生きる”ための開発目標とされているSDGs。なんとこの目標の期限が2030年に設定されていることは偶然にしては出来すぎている感がありますが、今、多くの企業経営者、地方自治体が強くSDGsを意識し始めています。その言葉を使わなくても、多くの消費者はポリ袋を使わないなどの行動をし始めています。

SDGsの開発目標の8番「働きがいも 経済成長も」では、すべての人々に生産的な完全雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を提供することを目指そうとしています。この目標は、人を大切にする人本経営を実践し成功していくことで確実に目標を達成していくことが出来ると断言いたします。

拡大再生産ではなく、調和善循環を求め、急成長を戒め、安定的な成長で持続可能性を高めていくのが人本経営の基本となる「あり方」です。

企業社会の圧倒的多数が人本経営で輝くようになったとき、アタリの懸念は解消されていることでしょう。そして、ポスト資本主義社会として「人本主義社会」と呼ばれるであろう穏やかな新しい社会が出現してくることになるに違いありません。

もちろん、そこに向かうまでは幾多の試練があることでしょう。しかし、利己は短期で、利他は長期です。利己は人心が離れ、利他には人が集まります。

野心ではなく志をもち、これからも人本経営の普及に邁進していこうと決意します。それがSVCのSDGs実現への行動にもなると信じていきます。

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