第797号 脱「株主第一主義」を目指し始めた米国

第797号 脱「株主第一主義」を目指し始めた米国

脱「株主第一主義」を目指し始めた米国

20日に日経新聞が配信したニュースタイトルに
「米経済界「株主第一主義」見直し 従業員配慮を宣言」という記事が踊っていました。

米主要企業の経営者団体、ビジネスラウンドテーブルが、株主第一主義を見直し、
従業員や地域社会などの利益を尊重した事業運営に取り組むと宣言したという内容です。
投資家の利益を優先してきた米国型の資本主義にとって大きな転換点となると報じています。

業績軸から幸せ軸へ、企業経営のあり方の根本転換を訴え続けてきた当通信としては、
とうとう米国でこういう機運になってきたという事実に感慨深いものがあります。

なぜ、米国でこうした動きが出てきたのか、記事では、いくつかの要因を分析しています。
まず、トランプ政権で貧富の差が拡大し富裕層に不満をもつ層を取り組むための民主党の思惑というもの。
これは、まあそういう側面もあるかもしれませんが、短絡過ぎて採用する気になれません。

しかし、もう一つ、指摘されていることは信憑性があります。
それはミレニアル世代の存在を無視できなくなってきているからという分析です。

ミレニアル世代については、当通信でもこれまで取り上げてきましたが、
80年代から2000年前後に生まれた若年層のことです。
日本では、ほぼ平成世代といって差し支えないかと存じます。

 流れを変えたミレニアル世代の存在

記事では、ミレニアル世代の6割が「会社の主な目的を利益追求より社会貢献と考えている」と指摘し、
そういうことを具現化実践している企業でないと優秀な人材の確保が出来なくなり、
スポンサーが離れ経営に影響が出ているためだと解説しています。

日本の平成世代は、バブル経済崩壊後に生を受け成長してきました。
日本全体が高度成長していくという高揚感とは無縁でしたが、
周りにはモノがあふれ物質的な豊かさを享受し、不自由なく大人になっていきました。

半面、デジタルネイティブというそれまでの世代とは大きく異なる環境下で基本的価値観を育んでいます。
SNSは生活の一部となり、コミュニケーション、他者との関わりには欠かせなくなり、
人との関係性を重視する傾向を強く意識するようになっていきました。

マズローの欲求5段階説に当てはめて解説するとわかりやすいのですが、
マズロー人の欲求は5段階あり、低次から高次へと昇華していくと指摘しました。

最初の段階は、生存欲求で生きていくうえで必要な欲求です。
食べること、寝ること、すなわち衣食住に関わる欲求です。
これが満たされてくると、より快適な安全の欲求を求めるようになるとしています。
今のマンション暮らしよりもマイホームが欲しいといった感覚です。

ここまでの段階は、いわば物質的欲求となります。
戦後の昭和世代は、ここに対する欲求はとてつもなく旺盛でした。
それもそのはずで焼け野原でまったく衣食住を充たすことが出来ない社会で
生活をしていかなければならなかったからです。

そして、豊かさを取り戻すということを共通言語に
企業戦士と揶揄されるまでに経済成長を追い求め
物質的に豊かな日本を築くこととが出来ました。

物質的欲求が満たされた次は、愛と所属の欲求、
よりよい家族関係、人間関係をつくろうという意識になり、
さらに承認の欲求、そのなかで人の役に立つことで喜ばれたり、
感謝されたりすることに生きがいを見出していくとマズローの言及は続きます。

つまり、物質的欲求が満たされた後は精神的欲求が強くなっていくという訳です。
ミレニアル世代、平成世代が所有欲より社会貢献欲が強くなるという理由が
このマズロー欲求5段階説で明快に理解できます。

人本経営はまさしく、愛と所属の欲求か承認欲求、そして最上位欲求とされている良い人間関係の中で
やらされ感のない自主自律的な自己実現の欲求を組織で具現化しようという経営です。
よって平成世代と親和性が高く、
これから社会の中心を担う彼らのパフォーマンスを最大限にできる経営であり、
今後、必要不可欠なものとなってきます。

この流れがついに米国で百花繚乱となってきそうだと日経は伝えている訳です。
日本と違い、戦後、米国は焼け野原になったことはありません。
にもかかわらずミレニアル世代と平成世代が極めて似た特性を示していることは興味深いものがあります。
多発する銃乱射事件や優しさのない米国第一主義といった、
行き過ぎたエゴイズムに疲れ出した米国の市民感情が支配的になってきているということかもしれません。

いずれにしろ米国は動き出したら早いです。
人本経営が世界基準になる日もそう遠いことではないように感じます。

[今週号のニュースソース]

会社、職場の企業風土・文化を幸福度増大を最優先に変革していきたい皆様に必ずお役に立つ内容です。
現在、これ以上の講師陣編成はありえないと思われる「人を大切にする経営」に寄与する独自のノウハウをもつ素晴らしいメンバーにご協力をいただけることになりました。
前へ前へと、これからの時代に進もうとする方のご参加をお待ちしております。
※第3講(9/26、10/17、10/31)のみの特別聴講も募集中です

このコンテンツの著作権は、株式会社シェアードバリュー・コーポレーション(以下SVC)に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、SVCの許諾が必要です。SVCの許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。


サービス一覧

講座日程一覧

お問い合わせ