第782号 CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)が会社を救う
2019.5.7
CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)が会社を救う
人本経営に成功していくことが、令和時代には健全に企業活動を継続していくために不可欠になってきていると感じています。
人本経営を成功させていくためには、支配型のボスによる管理主体のマネジメントでは功を奏しません。その理由は、多様性という令和時代の社会的要請に応えられないからです。
多様性を取り込むためには、一人ひとりの社員のポテンシャルを最大限に引き出す支援型のリーダーの存在が欠かせません。
しかし、右肩上がりの経済環境で、効率を絶対価値にして最大最速の収益性確保を目指すことに慣れ親しんだ経営者であればあるほど、感覚的には真逆に近い発想や行動が求められるために、その実践と成果の達成は容易ではありません。
必要性を感じているものの、経営者として自らが支援型リーダーシップの実践がむずかしいと感じている場合には、次善策を講じていく必要があるといえるでしょう。
すなわち、全員主役になるような経営人事マネジメントを実現していくための推進役を右腕、左腕に起用して、企業風土を改善していくことです。
そのような役割を担う専門職として、今後、CHOという存在がクローズアップされてくる可能性が高まってきています。
ネットで検索すると、「チーフ・ヒューマン・オフィサー」として使われている事案が確認できます。いわゆるヒューマンリソースマネジメントの専門家という位置づけです。また、「チーフ・ヘルス・オフィサー」という使用例もあります。こちらは健康経営の実現のための専門職という役割です。
当通信で提唱するCHOは、それらとは全く違う概念で、「チーフ・ハピネス・オフィサー」ということになります。
■新しい専門家CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)が会社を救う
企業において社員の幸福をマネジメントする専門の役職であり、社員の幸福度に注目し、その向上・改善を図ることで自社の成長に資するのが「CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)」の使命です。
CHOは、「持続可能性を高めるために企業経営における幸せ基準を認識し、自社の現状を把握、そして幸せ基準をクリアし、継続していくことを目指して行動していくリーダーのこと」と定義します。
グーグルなどの先進企業がCHOを導入したことから、近年、新しい組織マネジメントのあり方として注目を集めています。
マネジメント系では、欧米で流行りだしていると触れ込むと、日本で関心が高まるという構図がこれまでもよくありました。しかし、ことCHOに関しては、人本経営という幸せ軸の経営で「いい会社」づくりをサポートしてきた実務の現場に10年以上身を置いてきた者としては、ようやく時代が追いついてきたかという感覚です。
「幸福学」ということが、ことさら新しい概念のように露出されていますが、師事させていただいている坂本光司元法政大学大学院教授(「人を大切にする経営学会」会長)はすでに30年以上も前から、企業経営は業績拡大ではなく関わる人々が幸福になることが目的であると、業績軸よりも幸せ軸を最優先させる組織づくりの重要性を説かれ、提唱されてきています。
ともあれ、ステークホルダーの幸福度が高い会社でなければ、未曽有の生産年齢人口の激減時代に、持続可能性が高まらなくなってきたことは確実視されているところですから、CHOが活躍する会社が増えるのは望ましいことである、ということには異論はありません。
人本経営を企業に根付かせ、社風のいい企業風土を醸成させていくことが、CHOの重大な役割になっていきます。
本来は、すべての経営者がCHOの職責を担い、全うしていくことが望まれますし理想であると考えています。しかし、冒頭で指摘したとおり感覚的に実践実行が難しいと考える経営者にとっては、自らに代わって人本経営を執行していくベストパートナーとして起用し、権限を委譲し、委ねることでも効果は期待できます。
次号以降、令和時代の経営の切り札となるCHOについて詳しく論じて参りたいと存じます。
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