第780号 人本経営のパワーが炸裂する令和になる予感

第780号 人本経営のパワーが炸裂する令和になる予感

人本経営のパワーが炸裂する令和になる予感

日本の企業のうち99%は中小企業、故にわが国は中小企業の国であるという定説があります。

中小企業基本法では常勤の従業員数が、「製造業その他」で300人以下、「卸売業」と「サービス業」で100人以下、「小売業」で50人以下の事業者は中小企業とされ、このうち、「製造業その他」で20人以下、「卸売業」・「小売業」・「サービス業」で5人以下は小規模企業とされています。

中小企業白書によれば、大企業は1万1157者で、全358.9万者に占める割合は0.3%に過ぎず、確かに99.7%は中小企業であるということがわかります。前号で、わが国の企業数がかなりの勢いで減じてきていることを確認しましたが、減少しているのはほとんどが中小企業ということになっています。2014年から2016年にかけては、中小企業の減少数は23.1万者となっていて、そのうち小規模企業が20.4万者も占めています。一方、大企業は、なんとわずかですが、プラス0.4%と増加しているのです。

■わが国は中小企業の国ではない

従業員数でみると、およそ30%は大企業の就業者となっていますから、一見、わが国は中小企業の国のようにみえますが、実際は大企業が底堅く支えになっていることがわかります。

そして、リクルートによれば、平成31年春卒業予定の大学生の求人動向調査では、従業員300人未満の中小企業の求人倍率(学生1人に対する求人数)は9.91倍で、現在の調査方法として過去最高を記録し、その一方、従業員5千人以上の大企業では求人倍率が0.37倍まで下がり、学生にとって狭き門となっているのとは対照的な結果となったことを報告しています。

■人本経営の国を目指すことが正解

前号でみたとおり、今後の生産年齢人口の減少傾向を踏まえると、中小企業数はまだまだ減じていくことが確実視されているところです。また、わが国の企業の7割が赤字企業に相当しているといわれていますが、そのほとんどが中小企業でもあります。そして、人が採用できないという実態。このような状況下をふまえると、戦後かつてなかった中小企業受難時代が現在の社会情勢であるということは明白です。

今後も生存していく中小企業には、以下の条件が必要になってくるでしょう。

まずもって、赤字体質からの脱却が必要となります。しかし、リストラをして数値を見かけ上黒字に変えることができたとしても、その場しのぎの経営をしていては新規の求人に好影響が及ぶ筈がありませんから、時間稼ぎにしかなりません。さらに、小規模状態でいることも、持続可能性を高めるには厳しいと言わざるを得なくなっています。

では、どうしたらいいのか――。

そこで、やはり成功している人本経営実践企業に注視したいところです。人本の精神が組織に行きわたり、人のことで困らない企業文化となり、収益性も改善されてきている企業の最近の動向を注視していると、いわゆるM&Aや新規事業に乗り出している企業の事例が増えてきていることに気づかされるのです。

地元の老舗酒造メーカーの経営に乗り出した伊那食品工業、複数の同業産廃業者の事業承継をした群馬のアドバンティクレヒュース、さらに人本経営実践講座に参加された大阪のヒグチ鋼管もこの方向へ積極的な展開をし始めています。また、講座1期生のライト・ライズでは、学習塾への異業種進出を計画しています。特に同業ではない場合、相応のリスクが伴いますが、あくまで人本という幸せ軸を基幹に据えて企業経営を多角化していくことで、これからの時代に必要とされる企業体を新たに起こそうとすることは、価値ある取り組みではないかと感じられます。

企業数は淘汰され、少なくなっていったとしても、質のいい企業が増えてくれば、社会の健全性を増大させることにつながっていくことも確かでしょう。人本経営のパワーが令和の時代に炸裂する、そんな予感が漂っています。

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