第778号 改めて紐解く 究極の4つの幸せ
2019.4.1
改めて紐解く 究極の4つの幸せ
日本理化学工業、故大山泰弘会長の残された名言「人間の究極の幸せは4つである」という教え。改めて考察を深めてみたいと存じます。
■人に愛されること
4つのうちで根源はこの幸せでしょう。この幸せを育むのは、言うまでもなく家庭ということになります。人として生まれ、まず母親から無償の愛を注がれていきます。そして、小さな頃は大勢の方々からの同様の愛によって人は成長していきます。今日日、子供に対する虐待というニュースが報じられるようになり、根源的な幸せすら享受できない子がいることに胸が痛みます。わが子に対する無償の愛を提供できない状態では、その人間が幸せになるはずもなく、虐待をした親の人生の末路は哀れなものになってしまいます。そこまでいかないまでも、家庭を顧みずに自己中心的な関わりで周りの家族に不幸を感じさせていると、その者の人生も推してはかれるような将来が待っているに違いありません。物心がつき、親から受けた恩を感じたならば、親孝行をしていくこと、さらに親がこの子を産んでよかったと思えるように、社会に迷惑をかけない立派な人間に成長していくことは、確固とした幸せの形といえるでしょう。
■人にほめられること
誰もが小さかった頃に、何かのことでほめられたとき、何とも言えない面はゆい気持ちとうれしい感情、そして自分もまんざらではないなと自信めいたものが心に芽生えたことがあるのではないでしょうか。承認されることは、存在を肯定されることですから、生を与えられた立場からするとこのうえないエネルギーが与えられます。このことは、飼い犬がよしよしとほめられた時の態度でも一目瞭然です。そう、ほめるということは命を喜び輝かせる行為に他ならないのだと感じます。真逆の関係が「いじめ」、会社でいえば「ハラスメント」ということになるのです。子供社会でも大人社会でも、このことが大きな問題となることから、人にほめられるということが究極の幸せの一つになるという意義がわかるというものです。決してないがしろにせず、家庭でも職場でも相手への承認行動を意識していきたいものです。
■人の役に立つこと
3番目の幸せは、4番目の「必要」よりも先に位置づけられています。役に立つというと、高い能力やスキルが求められるような感覚になりますが、高度なレベルでなくとも、相手の役に立つことはいくらでもできます。例えば「笑顔」です。それこそ赤ちゃんはこれで「癒し」という役立ちを大いにすることができるのです。また、周りが音を上げたくなっているときに、特段の技能はなくても、一心不乱にあきらめない姿勢でい続けられたら、相手は勇気づけられます。
釈迦の弟子のなかでも特に優秀な弟子として知られる十六羅漢のひとりに周利槃特がいます。知的障がい者という説が有力ですが、周利槃特は記憶力や知力が周りの弟子より劣るため、「愚か者なので弟子にはなれません」と告げるとお釈迦様は、「本当の愚か者というのは、自分が愚か者だと気がつかない人の事をいうんだよ。しかし、お前は自分が愚か者だと気がついている。だから、お前は愚か者なんかじゃないんだ。」と諭し、箒を渡して掃除をするように命じました。その命を守り、来る日も来る日も掃除をしてそれを10年も続けた周利槃特は、凡事徹底の大切さを知らしめ、その一生懸命さに思わず手を合わせたくなる存在になり、阿羅漢になったのです。
■人から必要とされること
必要とされる自分になるためには、何かに秀でている存在になることが求められます。そのためには、日進月歩のたゆまぬ努力を積み重ねていくことが、それを成し遂げる鍵になることでしょう。人から必要とされるためには、自助努力が必要です。昨日よりも今日、そして明日へと成長していくことで、より多くの人や場面で貢献できるようになる経験を重ねていき、自分がこの世に生を受けた意味を知るようになり、幸福感は増大していきます。孔子がいうところの「天命を知る」という状態です。
「働くことによって愛以外の三つの幸せは得られる」と導師は大山さんに説きました。確かに、心底その状態の幸せを覚えるのは、世のため人のためになったという社会での達成感から味わえるものだと感じます。そして、大山さんは「愛も一生懸命働くことによって得られるものだと思う」と断じました。まさに今、誰からも大切にしたい会社だと称賛される存在になった日本理化学工業と、そこで働いている社員の皆さんは、社会から愛される存在そのものになっています。感無量です。見事というほかありません。
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