第756号 GPTWの最新提言を検証する③ ギャップ
2018.10.22
GPTWの最新提言を検証する③ ギャップ
[提言⑫]
「働きがいのある会社」に認定されている企業でさえ、職場経験のギャップは存在する。「ギャップ」というのは、従業員のバックグラウンドや会社での役割によって、職場経験が他の人より劣ると感じてしまうことだ。管理職と非管理職、女性と男性、ベビーブーム世代とミレニアル世代、白人とマイノリティで職場経験のギャップに直面している。ギャップが存在すると利益が減る。
今回のGPTWの際立った提言が、このギャップに対する指摘です。経営陣や経営幹部、リーダーが感じているほど現場の社員はよい職場経験ができていないと指摘しています。また、これは男女間、世代間、人種間でもいえるとしています。
職場経験という言葉が直訳すぎてうまく伝わってきませんが、これの意味するところは、働いていて感じる幸福度の度合とか、主体的にやらされ感なく働くことができている実感といったことだろうと理解します。
[提言⑬]
今までは、「高い能力を持った」従業員を見つけ出し、その人たちだけを教育することに重きが置かれてきた。これからのビジネスにおいては最高の結果を出すには、組織の一人ひとりが熱意をもってアイデアを出し、会社の目標を明確に理解する必要がある。
「全員主役の感動創造企業」と自社を形容する沖縄教育出版や「当社は逆ピラミッド、逆三角形の一番下に社長がいて現場が仕事をしやすいように支援をする」のが社長の役割と決心しているファースト・コラボレーションの武樋社長のように、人本経営実現企業では、すでにギャップのない「全員型働きがいのある会社」を実現している事例が少なくありません。高度成長の時代が終わり、みるみるうちに生産年齢人口が激減していく現在、一部のマネジャーが支配型リーダーシップを発揮していくスタイルをとっても市場そのものが減退しているので会社は成長していくことは不可能だと悟っているからです。成功している人本経営者は、メンバー全員の協力があってこそ企業としての明日への成長が得られると見切っているのです。社員一人ひとりがやりがいを高め、その結集ができてこそ、これからの時代は乗り越えられるのです。GPTWがいう「ギャップがあると利益は減る」というのはこのことを指摘しているに他ならないでしょう。
[提言⑭]
職務レベル感では、公正に関して最も大きなギャップがある。よく生じるギャップは、意思決定に関するものだ。経営者・役員に比べて、一般従業員と管理職は自分の仕事や職場環境に影響を与える決定権を持つことが出来ず、自分たちは上司から提案や意見を求められていないと感じている。自分たちに直接影響のある意思決定について、経営者が自分たちの意見を積極的に求めようとしていないと従業員が感じれば、その決定事項は自分たちが「決めたこと」ではなく、自分たちに「ふりかかってくること」と思うようになる。
対話による合意形成、この重要性については、これまでも何度も当通信で取り上げてきました。一人ひとりの給料までもMAと呼ばれる会社全体会議で決定してしまうアクロクエストテクノロジー(同社はGPTW日本の小規模企業群でランキング1位を達成)や、社長も1票しかなく全員の合意形成で重要な経営決定をしているというエイチエスエーが堅調に事業を成長させているのは、まさしくこれが実践できているからでしょう。
[提言⑮]
経営陣に意見ができるようになれば、その会社で働き続ける意思があると答える人の割合は3倍になる。経営陣に対して近づきやすく話しかけやすいと、その割合は4倍になる。
経営者と社員の距離を近づけよという提言です。辰巳工業の辰巳会長はこう語られています。「どうしても社長と社員の間には川が流れている。問題は川幅と思う。うちの会社は、小川でせせらぎが聞こえるような状態。だから私もあっち岸にすぐ行けるし、社員もこっち岸にすぐ来ることができる。」
社員との距離感が近いことを例えたのですが、実にうまい表現だと感心しました。ほかにも意識して人本経営者が社員との距離を縮める努力をしている事例は数多確認することができます。(以下次号)
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