第753号 五十六の格言に思いを馳せる
2018.10.1
五十六の格言に思いを馳せる
748号で紹介した山本五十六の名言が、人本経営を実践しようと頑張っているリーダーに好評です。改めて深く考察してみましょう。
■「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」
人本経営では、リーダーの役割は管理ではなく、支援に重きが置かれます。ああしろ、こうしろと指示をして支配的な権限をふるっていては、いつまでも経っても社風は良くなっていきません。
まず、手本として率先垂範していきます。クレドなどで行動規範を作成したら、それをまず自らが実践していくのです。理念の下にいるということの体現です。それが「やってみせ」ということになります。
そして、コミュニケーションを図り、目的を伝えていき、相手に理解を求めます。これが「言って聞かせて」の意味合いです。
その結果、メンバーの気づきが高まっていると感じたら、知行合一で行動と変化を促します。ここが「させてみて」の段階になります。
その結果はトライアンドエラーになるでしょうが、出来たのならもちろん、出来なくて失敗したとしても、スルーせずにその挑戦に対してよくやったなと「ほめてやれ」と指摘しています。
リーダーとメンバーの関係の質がこのような状態になってはじめて「人は動く」、つまり自主性・自発性を発揮すると指摘している訳です。
■「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
メンバーが自律し主体的に動き出したら、対話の質は合格です。次の段階は、この状態を日々継続していくことです。そこで再び「話し合い」と続きます。
朝礼などで日々、大切にしようとしている行動規範などを確認していきます。そこでも一方的になることなく、「耳を傾け」と傾聴の姿勢を忘れないよう釘を刺しています。
そして、「承認し」とリーダーの主観で否定することなく、受容して見守る姿勢を求めています。
さらに、「任せてやれ」と権限の付与や移譲をしていくことでメンバーの成長が図れるとしています。
サービス業で人本経営を極めている会社をベンチマークすると、顧客を喜ばせるためなら何をやってもいいと現場の社員に権限を与えているケースをよく学びますが、まさしくこの格言を実現しているのだと確認できます。
■「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
「やっている」、すなわち関係の質が向上し、メンバーが活き活きと働きだすように思考の質、行動の質を高めていき、顧客を感動させるような仕事ぶりになったら、わが社で人財として成長してくれていることに対して、本当に彼ら・彼女たちが一生懸命に働いてくれるから事業が存続し、年輪経営が実現できると、「感謝で見守る」ことを強調しています。
天彦産業の樋口友夫社長は、「経営者である自分一人で経営したら、たちまち会社が傾く。一人ひとりの社員が頑張ってくれているから、100年企業になれた。」と感謝の念を惜しみません。それが安倍首相を前に「わが社は社員第一主義ですから。」という言葉を真っ先に告げる姿勢になったのだと感じます。
そして五十六は、最後に「信頼せねば」と人本経営でも最も根幹となる言葉を用いてまとめています。性善説を土台にした絶大な相互信頼の風土が、人を大切にする経営を確実に前進させます。それが実現したとき、すべての社員は「この会社で、この仲間と働くことが出来て本当に幸せだった。」と人生の充実をかみしめることになるでしょう。人育ては会社の発展のためでなく、関わる人が幸せだったと感じることが究極の目的です。
それを「実り」と最後に五十六は結んだのです。なんと意味深いのでしょうか。
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