第746号 人本経営における「利益」の考え方
2018.8.6
人本経営における「利益」の考え方
今日は利益の話です。
業績軸から幸せ軸へということで、社員とその家族の幸せを追求していく人本経営。
いい会社をつくり、年輪を刻み続けていくために、利益はなくてはならない源であることは間違いありません。大儲けすること、会社を大きくしていくことを目的にするのではなく、社員とその家族の幸せな状態を実現していくための手段として豊かな経済を築いていくために利益を上げていくということです。
伊那食品工業の塚越寛会長の言葉です。
「つぶれない会社にするためには、成長していくことが必要。過去に比べて現在が、実質どこかがよくなることを成長という。どこかよくするために利益を出そう。利益は成長し幸せをつかむための手段。」
利益を出すということは、適正価格で商取引が出来る状態をつくりだすことが不可欠です。それを実現することが企業努力に他なりません。
■いいものを安く、ではなく、いいものを高く売る
未来工業の創業者・故山田昭男さんはこう語っていました。
「日本は、いいものを安く売り始めるようになってからおかしくなった。いいものを高く売る努力をしてこそ未来がある。衰退の元凶は「いいモノを安く売ろう」という発想だね。その先にあるのは過当競争。これでどうやって儲かるんですか? アメリカの製造業の経常利益率は平均で35%なのに、日本の製造業は3.5%しかない。日本の方が技術は断然、優秀なのにおかしいでしょ。
試しに銀座を歩いてごらんなさいよ。今や外国の有名ブランドの店ばかり。品質は日本製品の方が上だけど、「高い方(外国ブランド)」が売れる。そういう商売を日本がやらないといけないのに価格競争で疲弊してしまっているんだ。付加価値のある、差別化した商品を作り「高く売る」ことを考えなきゃダメ。」
身に染みるお言葉です。高く売るために、付加価値・差別化が重要だと指摘されています。
再び塚越寛会長の言葉です。
「儲けるためには、研究開発が何より必要。現状否定するところから発想していく。現状は長く続かない。現状の延長では必ずダメになる。」
新商品を開発し続けていくことが生命線だと、伊那食品工業では10%の利益と人材を未来投資、すなわちまだ商品となっていない「未来の商品」をつくるための研究や調査、試作品開発に投入しています。それを実行し続けたからこそ、価格競争に巻き込まれない経営体質をつくり、48年増収増益という結果につながっていったのです。
■重要なのは「現場」と「売上でなく利益重視」の考え
何が差別化になるのか、どのようなことが顧客に価値を感じさせるのか、この答えは、日々顧客と接している現場にしか答えはありません。従って、トップ・リーダーは、現場の社員のやりがい、働きがい、モチベーションを高めていくようにサポートを徹底していくことです。そして、現場との対話を繰り返して、未来商品を生み出すことを実現していかなければなりません。その際に、柔軟に発想していく姿勢を欠かさないことです。いいアイデアだが、それは無理と思考していては、いつまでたっても現状否定できません。成功は、幾多の失敗をものともしないチャレンジ精神なくして実現し得ないのです。
事業のあり方を根本的に考え直すということも一つのチャレンジです。減り続ける公共事業で先細る電気設備工事業にしがみつくだけでなく、家庭での電気周りを中心として「困りごとを解決するサービス」を新たな事業にしていった島根電工や、量販店に絶対できない徹底したフォローをしていくことでお客様に信頼され、高売りをしても売れ続けているでんかのヤマグチ、薄利な大型工事ではなく、受注額は小さくとも利益率の高いメンテナンス中心の仕事にシフトしていき、減収したものの増益で危機を乗り越えていった木村工業など、参考になる事例はたくさんあります。
売上でなく、利益構造をよくしていくことが持続可能性を高める鍵となるのです。
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