第728号 「業績軸から幸せ軸」ということの意味

第728号 「業績軸から幸せ軸」ということの意味

「業績軸から幸せ軸」ということの意味

「業績軸から幸せ軸へ」

坂本光司教授が人を大切にする経営について説明されるときに指摘された言葉です。

対前年比120%などといった数値目標を掲げ、それを達成することを目的に仕事をくみ上げていくのが業績軸です。この経営では、数値達成が主眼に置かれますので、結果は出やすくなりますが、そのプロセスに問題が発生しやすくなります。数値を上げたいがために、本当はもっと廉価な商品で十分なのに自社の別の高額商品を売りつけるような接客をしたり、一つでも多く売らんがために社員に残業や休日出勤の強要をして長時間労働前提の職場を形成してしまったり、利益を出すために取引先に強引なコストダウンを迫ったり、価格で仕入れ先を変えていくことが横行したりする傾向が強くなっていきます。

■満足を求める業績軸

このような状態で業績軸経営を強めていくと何が起きるかといえば、ステークホルダーとの関係の質が棄損されていく可能性が高まります。

顧客は騙されたと思い警戒心をもつでしょうし、社員は疲弊して病んだり、離職したりする者が増えるでしょう。仕入先は「いつかみていろ」と、協力関係とは逆の感情をもっても不思議ではありません。

業績軸は、短期的には成果が出やすくなりますが、持続可能性という点ではとても脆弱な経営であるといえるでしょう。

マズローの欲求5段階説でいうところの「生理的欲求」「安全の欲求」を満たすことが業績軸経営のステージととらえることができます。生きていくうえで必要な衣食住に関する欲求を満たし、より快適にありたいという人々の欲求を満たすことは業績軸でも十二分にできるでしょう。

実際、戦後の焼け野原となったわが国では、もう一度豊かに、すなわち、この生理的と安全という物質的欲求を満たすことが社会的ニーズでしたから、製造業を中心に復興を遂げ、発展してきたのです。白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の3種の神器から始まり、電子ジャー・カラーテレビ・ステレオ・ウォークマンと日本人は豊かさを享受していきました。そして、ビデオデッキが家庭で購入できるようになった1970年後半、「一億総中流意識」という言葉が流布されたことに象徴されるように、戦後追い求めてきた物質的欲求は日本社会において満たされたのだと考えることができます。

需要が満たされれば供給側の存在は相対的に薄れていくことになります。大企業となった家電メーカーが衰退していったのは、今考えれば必然であったのかもしれません。そしてバブルがはじけ、世の中の流れは大きく変わりました。パソコンが黎明期だったこの時期に、多くの日本の製造業がダメージを被ったのはある意味不幸だったといえるかもしれません。結局ウインドウズは日本に生まれることなく、パソコン関連の事業は米国の独壇場となり、やがてアップルが登場し、あっという間に時代はハードからソフト全盛となっていきました。弱体化した家電メーカーは、さらに価格競争というグローバル化が追い打ちとなり、瞬く間にアジア諸国の後塵を拝することになってしまいました。

■救世の鍵は幸せ軸にしかない

社会の隅々にまで物が行き渡った現在、企業が社会から求められるのは、「愛と所属の欲求」「承認の欲求」を満たしていくことに尽きるといえるでしょう。その商品により、周りとの関係の質が良くなっていくことを提供できれば爆発的に売れる時代になっているのです。フェースブックはまさしく、この欲求に見事に応えて大成功を成し遂げたとみることができます。ネット上で所属欲求を満たす「友達」を増やし、日々たくさんの「いいね!」という承認欲求を満たすことを提供したため、あれだけの発展をしたのです。

わが社の商品、サービスをこの視点からとらえ直していく必要があります。お客様が周りとの関係の質を向上させるためにどうあるべきか考えてみてほしいのです。そして、より幸せだと精神的欲求を満たすにはどう工夫していけばよいのでしょうか。さらに上位の次元にある自主自発的な「自己実現欲求」を満たすためにどのようなサポートがあるとお客様は感動してくれるのでしょうか。そうしたニーズに応えることにブレークスルー出来た企業が中心となってくる時代を迎えています。

みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

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