第721号 深刻化の一途をたどる人手不足、その対策には人本経営の実践しかない

第721号 深刻化の一途をたどる人手不足、その対策には人本経営の実践しかない

深刻化の一途をたどる人手不足、その対策には人本経営の実践しかない

■有効求人倍率さらに上昇、人手不足状況がさらに深刻化

厚生労働省が1月30日午前に発表した2017年12月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の1.59倍となり、1974年1月以来43年11カ月ぶりの高水準になったと報じられています。

すでに人手不足に苦しみ出している企業は少なくありません。2月1日には、NHKの朝のニュースで「人手不足倒産が急増中である」と特集で取り上げられていました。

ニュースで紹介されたのは、人手不足の影響で去年8月に破産を申請した運送会社でした。異変が起きたのはおよそ3年前。退職したドライバーを補充しようとしても応募がぱったりこなくなったということです。受注は増えていたものの、ピーク時に16人いた社員は破産直前には8人に半減し、トラックを売却するなど身の丈を縮めてしのごうとしましたが、売り上げが減り続ける中で経営が行き詰まり、創業40年を超える長い歴史にピリオドが打たれました。運送会社の元社長は「人がいないので仕事を受けたくても受けられない。予定していた仕事をこなすこともできず、売り上げが落ちていった。人がいれば仕事をずっと続けていたし、いろいろと考えていたこともできたと思う。本当に悔しいだけです。」と語っていました。

■NHKも生産年齢人口の減少問題を取り上げる

有効求人倍率は、高度経済成長期の終わりに当たる1973年に最高値2.31倍を記録しています。その後、バブル期に次のピーク1.58倍を迎え、以降は景気の波に連動して浮き沈みしていますが、リーマンショック時の2009年の0.45倍を底に、この10年はずっと上昇を続けています。

当通信では「わが国の生産年齢人口(15歳~64歳)の常軌を逸した減少が、人手不足常態化社会を招く」と以前から警鐘を鳴らしてきました。今般のNHKニュースでも同様の指摘をしています。NHKでは平成29年版情報通信白書を根拠に『1995年をピークに減少が続き、直近の2015年では7700万人余りと、すでに1000万人ほど減っています。この動きは今後さらに加速し、2050年にはさらに2500万人近く、落ち込むと予想されています。』と報じています。

当通信では、国立社会保障・人口問題研究所中位推計を根拠にしていて、これだと2050年にはさらに300万人減る予測となっています。いずれにしろ過去に経験したことのない未曽有の状況下を進行していることは間違いありません。

有効求人倍率は、もはや景気連動ではなく、わが国の人口の構造的問題から、今後上昇し続けていくことは避けられない情勢になっているのです。

■有効求人倍率3.00倍超の時代がやってくる

有効求人倍率はどうなっていくかということを、今後の生産年齢人口の減少比率で予測していくと、なんと東京五輪の2020年には1.98倍を超え、2020年代前半には過去最高値の2.31倍を更新し、2030年までには3.00倍を突破するものと考えられます。

伴って、今後、ニュースの運送会社のように人手不足倒産企業が激増してくることになるでしょう。ニュースではすでに人材の争奪戦が始まり、若手・中堅労働者1人当たりに数百万円のヘッドハント料金を業者に支払ってでも採用している会社があると紹介されていました。

これからは人材採用が経営の最重要課題となってくることは明白ですが、そのアプローチでは企業の体質を悪くしていくだけです。答えは、「人を大切にする人本経営の実践」にほかなりません。人本経営を本気で実行している会社では、このご時世でも確実に成果を出しています。指導している大阪の会社は2年前から本格的に人本経営を志していますが、昨年10人の中途採用を実現し、先日はこんな報告がありました。「今年になってマイナビ2018を再開し、『幸せ軸の会社日口鋼管です。追加募集を開始しました』と謳って新卒採用を開始しました。この時期からの新卒採用はかなりハードルが高いと思って半分諦めていましたが、1ヶ月で約10名のエントリーがありました。昨年からの累計では62名になり、マイナビの担当者から『これは奇跡的な数字です』と言われました。そして、今春卒業予定の女子大生1名に採用内定の決定をすることになりました。やはり人の採用には人本経営と密接な関係があると思います。」

事実は決定的です。2018年、人本経営を本気でするか、しないか、この差が企業の栄枯盛衰を決めることになるでしょう。

みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

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