第709号 人本経営の執行権の権限付与も有効な選択肢

第709号 人本経営の執行権の権限付与も有効な選択肢

人本経営の執行権の権限付与も有効な選択肢

先日、事務所の電話が鳴りました。

「人本経営の本を読んで連絡しました。もうこれだと思って・・・。」

その方は関西方面でご主人と御菓子屋さんを経営している奥方でした。では、一度お会いしましょうということで先週、大阪で開催されたGCC(グッドカンパニークラブ)に参加するように促しました。

当日、ご主人をお連れになりご来場されました。

人本経営を志し、一切のネガティブがない交流会であるGCCは、そこにいるだけで元気になり、力がみなぎってくる場です。会場として使用させていただいているヘッズさんが最近新社屋を増設し、これがまた、会社という概念をはるかに超えて、居心地のよさを充満させてくれます。もはやパワースポットといったほうがいい空間になっています。

社員の幸福度が高い職場の空気感に触れて、こちら(顧客)の満足度が自ずと高められてしまうようないい会社にある独特の体感と同じ感触を参加者はもっていただけます。そのご夫婦もまさしくで、お帰りになるときは顔も晴れ晴れとして、今後、自分たちが変わっっていくことを心してくれたようです。

聞くと、商売は繁盛しているとのこと。しかし、よくありがちな職人気質の徒弟制度が強く、その厳しさに耐え切れず、ここ最近は若いスタッフがいつかず退職が相次ぎ、現有戦力が激減し、経営危機に陥り始めているということでした。

■絵空事ではなくなってきた労務倒産の続出

このような事例は、今、全国で、いまだ幸せ軸の人本経営に移行していない職場で数多発生しているのではないでしょうか。とくに中小零細企業でそのリスクが高いのではないと感じます。

世の中、働き方改革ということが合言葉になり、働きやすい職場をつくらないと今の若い人たちに就職先として選択されないと察知した大企業が、この数年間でそれまでのことがまるでなかったかのようにあっという間に変わり始めています。ある意味、さすが大企業なのだと感心させられます。もちろん本当に人を大切にする「いい会社」に変わるためには時間はかかりますが、採用面において幸せ軸を打ち出すことで効果は割と早く出すことが出来ます。

ただでさえ若手労働者が激減していることに加え、大企業がそれをさらっていってしまったら、中小企業はひとたまりもありません。唯一対抗できるのは、人本経営に成功して、いい会社の風土を醸し出し、「この会社、ここの社員さんたちと働きたい」と若者たちに思わせることしかないでしょう。

もはや人本経営を愚直に実践して、働く人の幸せ感を向上させていくことを最優先の経営課題として中小企業は覚悟を決める時期になったと感じています。

■人本経営執行の権限を付与することも重要な選択肢

どうしても昔気質がぬぐえない、自分の時代はそんなもんじゃなかったと心が定まらず、人本経営の推進が出来そうにないということでしたら、その役を社内の適任者に委ねるのも一つの方法です。経営者の地位は譲らなくともよいので、人本経営に理解を示し、そういう会社づくりをしていきたいと強く思う者に執行を任せ、一切口出しをしないということでも道は開けるはずです。職人として商品の質についてはご自身が責任を持ち、組織の人本経営の推進は適任者に権限を付与するのです。プロサッカーチームのオーナーと現場の指揮権をもつ監督がそれぞれ重要な役割を果たすような関係性です。

そのくらい思い切ったことをしないと手遅れになる時代がやってきているのではないかと本当に感じています。

東京オリンピックが開催される2020年までが、経営の質を変える大きな機会といっていいのではないでしょうか。まず、そこまでは大きな国家目的ということもあり、企業社会は大きな揺れを感ぜずに進んでいけそうだと期待感がもてるからです。しかし、その先は五輪特需に踊った企業の衰退や、あおりを受けて企業社会の構造が大きく変化してくる可能性が高いと見込まれるからです。騒乱の時代に慌てて人本経営に動くのでなく、割と平穏な今、じっくり腰を据えて未来のために本気モードに入ろうではありませんか。

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