第696号 人本経営に成功する方法論3 居心地のいい職場をつくる
2017.8.7
人本経営に成功する方法論3
居心地のいい職場をつくる
人本経営に成功している企業をベンチマークして、最近よく感じられることは、トップやリーダーが「メンバーが組織に居心地のよさを感じているか」をとても重要視しているということです。
ファーストコラボレーションの武樋社長は、「連帯と信頼のある組織づくりが必要だが、それだけでは本当にいい会社というには足りず、それに加えて安心感があることが大切だと考えている」と発言されています。
■安心感は居心地のよさを醸し出すキーワード
安心感、まさしく居心地のよさを醸し出すキーワードといっても差し支えないでしょう。
米グーグルが発表した「プロジェクト・アリストテレス」という調査報告は、とても興味深い内容になっています。
グーグル社内には様々な業務に携わる数百のチームがありますが、その中には生産性の高いチームもあれば、そうでないところもあるといいます。そこでグーグルは、「同じ会社の従業員なのに、何故そのような違いが出るのか?」ということについて様々な角度から分析し、より生産性の高い働き方を提案することを目的としてプロジェクト・アリストテレスを実施しました。
「チームワーク」を重視して分析を進めましたが、目立ったパターンを見つけることができませんでした。「社外でも友達同士」のようなチームでも、「仕事以外ではアカの他人」のようなチームでも、生産性の高いチームもあればそうでないチームもあり、法則性は見出せなかったということです。
次に、チームの中にある「規範」に着目しました。しかし、仕事中に雑談するようなチームでも、私語は厳禁というチームでも、生産性に関して目立ったパターンは見つかりませんでした。
試行錯誤の結果、浮かび上がってきたのは「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性だったということです。成功するグループ(チーム)では、これらの点が非常に上手くいっているというのです。
たとえば一つのチーム内で誰か一人だけ喋りまくって、他のチームメイトがほとんど黙り込んでいるチームは失敗しやすく、逆に(途中で遮られるかどうかは別にして)チームメイト全員がほぼ同じ時間だけ発言するチームは成功するケースが多いというのです。
そして、それは暗黙のルールとして、そのような決まりを押し付けるのではなく、むしろ自然にそうなるような雰囲気がチーム内で醸成されることが重要だとしています。
「こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか」、あるいは「リーダーから叱られないだろうか」といった不安がチームのメンバーから払拭されている状態をつくることが重要だという結論です。心理学の専門用語では「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれる安らかな雰囲気をチーム内に育めるかどうかが成功の鍵であると報告されています。
そして浮かび上がってきた新たな問題は、個々の人間が仕事とプライベートの顔を使い分けることの是非であったといいます。公私混同ということではなく、同じ一人の人間が、会社では「本来の自分」を押し殺して「仕事用の別の人格」を作り出すことの是非ということでした。
■人本経営実践企業では仕事とプライベートの人格は一致する
人本経営に成功している会社では、間違いなく本来の自分で日々仕事をしていると感じられます。いの一番に大切にしていくのが「社員とその家族」だからです。よって仕事の都合よりも家庭の事情を優先していいという企業文化をつくりだしていきます。必然的に一人ひとりの社員が、今、どのような家庭状況になっていて、どのような喜怒哀楽を感じているのかということについて相互に関心を寄せあっていきます。したがって、会社向きの人格をつくり出す必要が生じないということになります。
裏と表といってもいいと思いますが、そのような生き方をしていては会社にいる時間はストレスフルになることは間違いなく、居心地よく感じられなくなってくるのは当然でしょう。
本当の自分で前向きに仕事をし、自分の良さ、長所を発揮して、人として成長していく、そしてそれをサポートしていく会社づくりをしていきましょう。その結果、社員の幸福度は高められ、働きがい、やりがいを感じて、顧客が感動する仕事が多数実現していくことになるのです。
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