第692号 伊那食品工業視察記2017 先に思い行動する
2017.7.10
伊那食品工業視察記2017 先に思い行動する
人本経営の聖地巡礼。2年連続で七夕に伊那詣でをいたしました。
80歳になられた塚越寛会長より貴重なご講話を賜りました。何度訪ねても、その度に新たな学びがある伊那食品工業は、まさしく原点回帰できる貴重な存在です。
では、さっそく今回の視察のシェアをいたしましょう。
■哲学をもたないとうまくいかない
『会社を作った動機が個人的資産を増やすためであったとしてもそれは否定しない。けれどある程度の規模になったら、テクニックではなく私を離れて公の経営をしていくことが必要』と説かれていました。
企業の「企」の字。人が止まると書きます。幸せであるから人は止まろうとする訳で、この字からして明らかであるとおり、企業は人を幸せにするためにあるのです。あらゆる人間の営みは、お互いが快適になるために行っているはずですが、幸せのためであるとはっきり意識はしていません。その意識をはっきりさせないので、目先の利益に目を奪われることになります。
社員の幸せ増大のためには、右肩上がり、ゆっくりと末広がりになっていくことです。そのために何をやるのか――「年輪経営」がその答えです。
いいとわかっていても年輪経営の実現は簡単ではありません。世の中の変化が激しいからです。ゆえに流れを読み解き、事業をどう変化させるか、先を読んで手を打っていくことが求められます。
『時代を読んで手を打つ、即ち布石を打つことが経営者の仕事。これは会社ですることではない』と塚越会長は明言されていました。
■先に思い行動する
「いい会社をつくりたい、しかし現状の経営状況では・・・。」
「思いが先か、儲かってからか?」
『先に思い行動することが大事だ』と語られていました。
『儲かってからでは、社員は感動しない。利益はカス。もちろん闇雲に使うのは論外だが、社員のためにこれくらいは使っていいだろうと前向きに使っていくことが大切』ということです。儲かった結果なら当たり前なので社員は感動しないが、今、この段階でそこまでしてくれるのかと感動になるといいます。
■思うは招く
このお話をお聴きして植松電機の植松努さんの「思うは招く」という言葉を思い出しました。
「思」という字は、田んぼに心を入れることが語源とされています。つまり種をまくという状態です。まかれた種は、やがて根を張り、芽を出します。これを成長させるために日々、思ったこと言ったことを実践していきます。言が成っていくので、それが誠実という状態をもたらします。そして、このことを続けていけば、やがて実がなり果実となります。それは現実なのです。
時間はかかるけれど、そういうプロセスを積み重ねていくと「いい会社」が実現してくる、それが年輪経営だと深く学ばせていただきました。
出来ると信じることが大事なのでしょう。出来るという言葉は、出て来るが転じています。世の中にはすでに偉大な力が存在しています。それを自らの努力で出せるかどうかなのです。時間はかかるけれど出せたら出来るのです。
■会社の資産には二つある
会社には目に見える資産、つまり土地や建物・車両・機械設備などのほかに、目に見えない資産があります。目に見えない資産とは、信用であったり、イメージであったりします。
目に見えない資産は、たくさんの人が関わってつくられたもので、非常に大事なものです。これを増やしていくためには、とても時間がかかりますが、失うことは一瞬で起きてしまいます。
目に見えるものは満足に関連し、目に見えないものは幸福に関連することが多くありそうです。
仏教の教義にもある色即是空。目に見えるものが「色」で、目に見えないけれども存在しているエネルギーが「空」と教えています。
目に見えないものが目に見えるものをつくっているという事実。塚越会長がおっしゃる『先に思い行動すること』の重要性は、この教えにも通じるものがあるのではないでしょうか。
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