第686号 大企業との新卒獲得合戦に勝つ採用のあり方とは

第686号 大企業との新卒獲得合戦に勝つ採用のあり方とは

大企業との新卒獲得合戦に勝つ採用のあり方とは

リクルートワークス研究所が先月発表した「大卒求人倍率調査(2018年卒)」 によると、2018年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.78倍となっています。

企業が75万人採用したいのに供給される学生数は42万人しかいないということです。これからずっとこの状態が続いていきます。採用について根本的に考え方を変えないとならない企業が続出してくることは明白な状態といえるでしょう。

人を大切にする人本経営を実践している会社の採用方法をベンチマークしていくことは、今後とても有用な経営課題となってきているといえるのではないでしょうか。

■大企業との新卒採用合戦を制して2017年33名の新卒採用を実現したテニススクール

兵庫県に本社があるテニススクールを運営しているノア・インドアステージ株式会社。

2008年頃から業績軸から幸せ軸へ経営の舵を切り出していき、ノアイズムが生まれ、人を大切にする企業文化が花開き、2013年には経済産業省の「おもてなし企業50選」に選出されるまでに社風を改善していきました。いい会社づくりに励みだし、2011年から新卒採用にも本格的にチャレンジしていきました。2017年の新卒は33名も採用することに成功しています。

テニススクールが事業ですから、採用する学生は、大学のテニス部や同好会、サークルなどで実績を残してきた若者たちとなります。実は、こうした体育会系の活力のある学生たちは、上場企業や有力企業も欲しい人材として白羽の矢を立てています。

中小企業のテニススクールが大企業と人材の争奪合戦をしなければなりません。そうした状況下で33名の新卒採用を実現していることは特筆すべきといえるでしょう。その成功要因は、参加した学生の8割が一次面接に訪れるという実績を上げている会社説明会にある、と大西社長は語ります。

どのような会社説明会をしているのでしょうか。

まず、トップ自らが会社説明会の前面に出て、ノアという会社のトップはこういう社長だと知らしめることを意識して行っているといいます。そして、入社2~3年目のフレッシュな若手を同席させるために連れて行きます。

その会社説明会は、会社概要説明20分、若手社員のセッション15分、ノアイズムが実践された仕事でのエピソード動画10分、社長スピーチ20分、そして残り時間は座談会・質疑応答に当てられ、2時間程度で行っています。

この2時間に、そのままノア・インドアステージの社風が出てきます。

説明会だからといって、会社をよく見せるだけのトークや演出は一切ありません。普段の職場でしているとおりに社長、社員ともに振舞います。大西社長は、自分は安くない給料を払っているのだから社員は働いて当然という考えでいたこと、それで多くの離職者を発生させてしまったこと、そして、そうした困難はあったけれども反省して会社は変わってきた――とここまでの事実を隠さずに学生たちに話をしていきます。若手の社員たちも、入社後のギャップとして感じていること、朝から夜中までテニススクールが開いていて実際の仕事はけっこうハードなこと、それでも何でも云える風土があって自分を受け入れてくれるので、楽しく仕事をして成長実感があること、などありのままを伝えていきます。

それが説明会に参加する学生たちに裏表のない会社だと好感度を与え、一次面接に8割の学生がやってくる結果を残しているのです。普段からそういう企業文化・風土がなければ、会社説明会のときにできる訳もなく、実際にそうだからこそ会社説明会に参加した学生たちによく伝わっているに違いありません。参加者アンケートでは社長のスピーチが最も印象に残ったと多くの学生たちは答えているそうです。

やはり、社風をよくしていくことがいい人材との縁結びの可能性を高めてくれるのです。それを実現するのは愚直な人本経営の実践に尽きます。

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