第677号 表と裏の話
2017.3.21
表と裏の話
表と裏。
人は誰も二つの顔をもつといわれています。
犯罪者以外、社会と対峙しているときの自分はほぼ表の顔でいると考えられます。一方、一人で自分のためにだけ過ごしているときは裏の顔の時間です。
社風をよくする研修などでマインドセットをすると表の顔が笑顔になってきます。しかし、よし行くぞと思っても現実に戻ると、理想と現実の差に熱が冷めて、また思考を止めて自分だけの裏の顔に戻りたくなってしまいます。
■表は苦、裏は楽
極端にいうと、人生はこの繰り返しなのかもしれません。
表と裏はまさしく一体ですから、生涯つきまとうことになります。問題はどっちで生きている時間が多いかということになるのです。
エゴイスティックな自己に支配された時間でいる自分を減らすように、外に出て学ぶ機会を増やす、独学でも自分のためだけでなく、人のため社会のために役に立つ自分になろうと読書している場合は表の顔の時間です。
自分だけの時間にいると楽ですしその時はストレスがありません。しかし、人として成長せず、真に幸せな状態とは程遠いといえるでしょう。
一生懸命に仕事に打ち込んだり、人を喜ばせたりしようと我を捨てて尽力していくのは骨が折れ、疲れます。しかし、その疲労感は裏の時間では決して味わうことのない至福の達成感をもたらしてくれます。
日本理化学工業の大山泰弘会長の至言、『人の究極の4つの幸せ(愛されること・必要とされること・役に立っていること・ほめられること)』は、一人でいる裏の顔の時間では誘引されないという厳粛な事実をもう一度想起しましょう。
■人本経営は表の顔で生きる宣言
経営者が人本経営を実践するということ、それは表の顔で生き切るという宣言でもあり、関わるステークホルダーに対しても表の顔で生きる充実感をもたらすという決意表明をすることに他なりません。
表の顔の時間は綺麗ごとで成立しています。よって長く表の顔でい続けるためには、綺麗ごとを徹底していく必要があります。これが人本経営の難しさでもあり醍醐味でもあります。
人本経営を実践しているリーダーは、徹底的に社員との対話をしていく時間を捻出しようと努力していきます。社員との関わりを増やせば増やすほど、あんなこともこんなこともしていかなければならないという気づきが生まれ、行動が感化され、自分のことだけを考える時間は激減していきます。
よかれと思って実践しても、思うような結果が得られなかったり、こんなはずではなかったと心が折れそうになったりすることもまま生じるでしょう。
そこで、裏に引っ込んでしまっては身も蓋もありません。それは成長痛だと捉えて、くじけずにまた周囲との対話をくりかえす努力をしていきましょう。
自分も相手も表の時間でいる時間が多ければ多いほど幸せになっていくのは間違いないのですから。そこに確信をもって進んでいけば、必ず関係の質は向上していきます。
その結果、至福の達成感を得るような変化を感じることが多くなってくるでしょう。
ただ、見返りを求めていくのは人本経営の極意ではありません。
人本経営を実践して、表の顔でいる時間をつくっているという意識と行動が出来ていることを日々確認し、安心して一日を終えている自分に気づけていることに感謝をしていきましょう。
この自利利他の状態を続けていくことが人本経営実践の要諦です。
相手の状態がよくなっていくことが、自分自身の至福と同一化していく――これ以上ない素晴らしい関係の質といえるのではないでしょうか。
人本経営で得られることは「究極の幸せ」、これに他なりません。
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