第671号 SCSKに学ぶ「働き方改革」成功の鍵

第671号 SCSKに学ぶ「働き方改革」成功の鍵

SCSKに学ぶ「働き方改革」成功の鍵

まず、ITの会社に意気揚々と就職したものの、37時間連続勤務や、月150時間超の残業を強要され27歳で過労死した若者の母親のメッセージが紹介されています。

「私たちが一生懸命育てた一人一人の子供です。もう少し人間としての扱いをしてほしかったと思います」

■人間尊重が働き方改革の原点

無念さが端的に伝わってくる母親の悲痛な心の叫びに胸が痛くなってきます。働き方改革は、人が人らしくあるために、社員がより幸せな人生を歩んでいくために実践されるという大前提がなくては成功しません。これを機に、自社では「人を大切にする企業文化を根付かせる」と決断して進めていきましょう。

■トップの本気度、覚悟以外に働き方改革を成功させる手立てはない

続いて情報システム業界第5位のSCSKの働き方改革の事例が紹介されています。同社では以前、金曜日は土日に仕事を残さないよう決まって残業、帰宅はなんと午前2時。それが現在は6時半には一家団らんの夕食がとれるようになっているという社員の事例が紹介されています。

残業削減は、現相談役である中井戸信英氏が経営者として断行し、実現しています。同氏の思いはこうです。

「従業員を犠牲にして、ブラック企業と言われて残業をめちゃくちゃやらせて、それで利益を出しても一流とは言わない。世間で、あの会社は立派だ、いい会社だ、自分の息子や娘も就職させたい、いい会社に勤めているらしいねと言われ、それでいて成果も出せる会社。そのためにはやっぱり“働き方”なんです」

この思いがあったからこそ働き方改革が実現できたといっても過言ではないでしょう。その本気度を手紙に記して、中井戸氏は社員とその家族に伝えました。

「一流企業となるためには、家庭生活を充実させることが大切です。職員の皆さんが健康であり続けるために、最大限の支援をします」

■取引先にも協力を要請する

長時間労働の是正は、自社だけでなく、取引先との関係を修正しなければならないケースも発生します。目指す方向を明示して、理解促進していく努力が必要です。中井戸氏は取引先に対してこのような手紙を送っています。

「弊社社員が休暇取得できるよう、ご配慮いただけますと幸いです……」

ここまですると社員たちもよく考えるようになります。今まで仕事の仕方でロスがあった点や、進め方の問題点を掲げ、途中途中で取引先にもチェックしてもらいながら小さな軌道修正をし、PDCAを回すようにしていったということです。この改善によって労働時間は削減され、営業利益、利益率はUPし、同時に取引先の社員の時短にもつながり喜ばれているということです。

■残業代削減による賃金ダウンを招かない方策を実施する

SCSKでは、残業を減らした分「報奨金」が賞与で支払われています。ある社員はボーナス時に12万円上積みされていたといいます。記事では「残業を減らせば残業代を出す」前代未聞の奇策としていますが、割増賃金の支払いがなくなり、生産性が上がっているのですから、これは理に適っているのです。ここまで実現すると社員の納得感は増し、相当にモチベーションが高められることは確実でしょう。さらによい仕事をしていくことに励んで顧客満足をもたらし、企業業績へ反映される好循環が期待できます。

同社では、かつて180時間以上もあった残業はみるみる減り、6期連続で営業利益が右肩方上がりとなっているそうです。働き方改革の成功の鍵がよく理解できるSCSKの事例です。参考にしていきましょう。

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