第669号 ヘッズに感じた働き方改革で目指すべき姿
2017.1.23
ヘッズに感じた働き方改革で目指すべき姿
2010年に著した『元気な社員がいる会社のつくり方』(アチーブメント出版)を読まれて、意気投合した大阪の株式会社ヘッズの暮松邦一社長。先週、20数名の皆さんと一緒にベンチマークに伺わせていただきました。
対前年比で125~130%の事業拡大をしてきた同社、毎年3億円規模で売上が増えていきました。しかし、社員の離職率もまた毎年25~30%になっていました。
事業規模の拡大で自信を深めていた暮松社長ですが、はたと気がつきました。
「社員30人の会社で30%離職すると9人が抜けるので、これを補うために9人の採用が必要で、さらに30%成長に伴って新規に9人の採用が必要になる。」
採用にかかる時間や費用、そして新人教育に要する時間や費用、残っている社員たちへの負担も膨大となっていきます。「こんな経営続くわけがない」と自問しました。
自分の人生の目的達成のための手段でいいのか?
会社とは利益を上げるためのものか?
社員の人生を預かっているのにこれでいいのか?
辞めていった人の人生を…狂わせたのかも?
こんな悩みが脳裏に浮かんでいきました。ついに10年間共にしてきた社員が会社を離れることになり、このままではだめだと藁をもつかむ状態だった時に拙著に出会っていただいたのです。
顧客満足の前に社員の幸福を追求していくことが大切であるという人本主義の考え方に共感された暮松社長は、すぐに東京へ飛びました。それから「幸せに生きる!」ことを人生の目的にチェンジし、会社の社是も「幸せ制作会社」に改めていきました。
■他人を幸せにできる人が幸せになる
幸せになるためには、「他人を幸せにできる人が幸せになる」ということを旨に経営していく、と心変わりしていきました。何がどう変わったのか、暮松社長はわかりやすく図で示してくれました。
過去 → 現在
売上中心主義 → 幸せ制作会社
戦略主義 → 利他主義
ターゲット → 三方よしの精神
勝つか負けるか → 皆が幸せになる
あり方、考え方の大きな違いがあって、その違いがとても大事だと改めて語られていました。
今日、未だに左側の概念で経営が行なわれている企業は少なくないことでしょう。そんな中で働いている労働者は、今も生き馬の目を抜くような相手との競争に明け暮れて、心身を摩耗しているに違いありません。そして、耐えきれなくなった社員が退職していくのです。それすら選択する思考力を奪った会社が近頃もニュースを騒がせたのです。
一方、右側のあり方で経営をしていくことで、日に日に社員間の結びつきがよくなり、職場に笑顔が増え、社風がどんどんよくなっていきます。それが取引先やお客さんに届き、感動や感謝のレスポンスとなって戻り、ますます社員たちのやりがい、働きがいを高めるという好循環を生み出していきます。
両者の決定的な差は何なのでしょうか。それは「愛」に尽きるでしょう。
それは、これまでの業績を追い求める経営では、決して取り扱われることなく、ないがしろにされていましたが、人として生きていくうえでとても大切な存在です。
暮松社長は、嘘偽りなく、みんなが幸せになるための会社づくりに励んでいきました。やがて社員の意識が変わってきたことも実感できるようになったそうです。そして、7年が経ち、今年度はとうとう離職者はゼロ、一人もいなくなったそうです。
働き方改革で目指すべき姿がヘッズにあると実感させられたベンチマークとなりました。
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